マパ
●参加者…男85~95人。16~40歳は軍人(マグミ dmag myi)、40~60歳は総監(チャワ spyi pa)とよばれる。女35人軽度。16歳以上の未婚。
●由来…1)戦いに勝って帰ってきたときの祝いがはじまり。
2)6月の収穫期を前に、雨による被害がないよう、山神に供え物をし、歌舞を捧げた。
●費用…各家が一斤の酒を供出。
●組織…力をもっているのはハワとカンゴワと8家族(mi khyim brgyad)であり、かれらが規則、費用、準備などについて話し合う。うまくいかない場合、8家族の管理人('khyug bdag khyim brgyad)が仲裁にはいる。
●準備…はじまる一週間前、からだをきれいに洗う。
開始日の朝、サン(焼香)をしながらドゥッカル経(白傘蓋仏母経)を読誦する。
サンチュ(焼香)が終わったら、カンゴワが規則や予定について発表する。
●供え物…各家の供え物は酒、ヨーグルト、甘酒、飴、果物なんど。サンに供えるのは、サンツ(小麦粉)、ツアンパ、小麦、米、飴、果物、茶、花など。真ん中にバター灯を置く。
●ダヒュン(mda' shing)…矢。6月21日午後、ダヒュンをもって川へ行き、水に浸す。軍人(マクミ)たちは川の水で顔を洗う。むかしは泳いだという。そうすると病気にならないと信じられていた。
●キッタル(旗・幡)…キッタルにはタルチマ (dar dkyis ma)とツァカ(tsa kha)がある。ツァカ上にアンニ・サーロン(A mye gsa' lung)が描かれる。ゾッホク(ルタとおなじ。纏に似る)は経文を印刷した紙を木に吊るしたもの。
●カンプク(カマルとおなじ)…ハワ、あるいは年長者が挿す。行なう前にきれいにしておかないと血が出るといわれる。血が出るのは屈辱的。カンプクをすれば病気にならない。
●チェムゼ(khyim 'dzul 家に入る、の意。ハチャンカのこと)
6月23日 ロクマ部落(Rog ma)でチェムゼ。
6月24日 カワマ部落(rKa ba ma) でチェムゼ。
6月25日 ジャンクル部落('Jam skorでチェムゼ。
チェムゼは、アンニ・マッホン神が降臨したとみなされる。チェムゼをすれば、人も家畜も無病息災だと信じられている。各家に入るのはアンニ・マッホンの旗、ハワ、軍人(マグミ)の順。この村に神輿はない。入るとき、ウェーハーの掛け声を三度唱える。家のなかの守護神の前でもウェーハーを三回唱える。占いをして、吉(裏・表)が出たらまたウェーハーを三回唱える。
●本祭
6月21日 午後6時、ダヒュンをもって川で沐浴。
6月22日 午後6時、村人は二手に分かれ、アンニ・ジャタン(A mye Gya ting)とユハ(Yul lha)のタンカが掛けられた軍旗(トク)をもって行進する。半時間後、さらにアンニ・マッホンのタンカが加わる。
6月23日12時30分 ドンカム部落長官(dpon po) の家にみな集まり、チェムゼに出発する。
4時30分 チェムゼを終え、将軍廟広場(dmag dpon thang)に入場。広場の外側を三周、内側を三周まわり、ウェーハーと唱える。占いをしたあと、ガル(舞踏)の輪を作っていく。
4時50分 男のガル。5時10分、女のガル。5時30分、男のガル。5時50分、チヤワ(長老)の踊り。6時、女のガル。6時20分、男のガル。6時40分、チャワの踊り。
6時50分、 女のガル。
7時20分 ウェーハーと唱えながら、外、内、各三回ずつ踊りながら回る。
6月24日正午 カワルマ部落でのチェムゼが終わるとマニ神廟に至り、みなでドゥッカル経を読経する。
2時30分 各家がマニ神廟でサンを焚く。
3時30分 ボン教のチョンウ部落(Khyung bo)に近い広場でサンを焚き、軍人たち(マクミ)は弧を描いて群舞する。このときカンプク(kha 'bugs カマルのこと。挿銅針)をする。そのあと長老はサンを焚き、ほかのひとは爆竹を鳴らし、鉄砲を撃ち、雄叫びをあげる。ハワとマクミたちはチョンオ部落との境界まで行き、火を起こしてゾッホグ(tdzogs shog)を燃やす。灰を混ぜたり、雄叫びをあげたり、旗をあげたりして、ウェーハーと叫びながら戻ってくる。それを年長者たちが迎える。ゾッホグ儀式には由来がある。(伝説の項参照)この儀式のあいだ、チョンオ部落の人々は家のなかに鎌を隠し持ち、戦いに備える。
4時30分 四つの家族だけがジャツァンマ村(rgya tshang ma)へ行き、祭りに参加する。
4時50分 将軍席広場へ行き、外と内三回ずつ踊りながら旋回する。
5時10分 男のガル。5時30分、女のガル。5時40分、チャワ(長老)の踊り。5時50分、男のガル。6時10分、女のガル。6時30分、男のガル。6時50分、女のガル。7時、チャワの締り。7時10分、男のガル。7時30分、女のガル。
7時50分 アンニ・マッホンのツァカ(tsa ga 小画片)とタンカをもち、四時半と同様に、チョンウ村との境界でゾッホグを行なう
8時20分 終了。
6月25日
正午 ジャンコル部落へ行ってチュンゼを行なう。
1時50分 ゼナン(rdzi nang)という所で踊り、カンプク(挿銅針)をする。
2時10分 将軍廟広場へ行き、外内を三回旋回しながら踊る。
2時30分 男のガル。2時50分、女のガル。3時10分、チャワの踊り。
3時20分 (挿銅針しながらの)男のガル。3時40分、女のガル。
4時 雨が降っていたら、雨を止める儀式を行なう。四方にマクミ(軍人)が立ち、中央にハワと長老(ンガッパ)が立つ。各方向にむかつて雨を駆逐し、マクミが頭に巻いているタオルを取ってくる。
4時20分 劇。高官らしくきれいな服装を着たボンポ(長官)とボンモ(その妻)が招待され、顔を隠しながら登場する。
4時30分 劇。ボンポはヒツジの皮の衣を裏返しに着て矢をもった父であり、ボンモは装飾品をこってりつけた母。
4時40分 劇。ガッサルのハワ(演員)登場。ガッサルはマパの隣にある土族の村。由来はあきらかではない。
4時50分 劇。ふたりの男がポロ布をかぶり、獅子舞のように雌牛を演じる。雌牛が場内に牽かれて入ってくると、年長者はつぎのような説明をする。「ドンカムには百人もの息子がいる。それなのにこの雌牛は山に行っても草を食べない。海に行っても水を飲まない」。
4時55分 劇。顔をタオルで覆った男たちがマッホン廟から駆けてくる。雌牛にのり、交尾のしぐさをする。それから香炉(サンクン)へ行ってサンを焚き、ツァカの棒にのぼり、子宝に恵まれない家族を訪ね、交尾のしぐさをしてから戻ってくる。
5時 マクミ(軍人)たちはルカン(竜廟)へ行く。廟の前にはガッサルのハワ、父母なども来て、寸劇(喜劇)を演ずる。
5時40分 劇。母はマッフン廟に戻る。父は母を探すが見つからない。探しながら、いろいろな冗談を飛ばす。
5時50分 劇。父はガッサルのハワをよび、母の居所を尋ねる。ハワ(演員)はお告げをする。
6時 劇。母を探し当てる。ジョークを連発。
6時20分 ラーイー(情歌)。男が男役、女役にわかれて恋の歌をうたう。
7時20分 劇。秤で計って、マクミ(軍人)それぞれに千五百斤の金を与える。(という演技)
7時30分 ウェーハーと叫びながら、アンニ・ジャタンとアンニ・ユハをマッホン廟に招来する。アンニ・ジャタンがアンニ・ユハを送る。
6月26日 午前 ハワとカンゴワはマッホン廟で清めをして終結。