夜もすがら
今夜、寝てはいけない。
あれだけ願っていたものがやってくるのだから。
内なる陽に温められ待っていたのだ、
驚くべきものを目にするそのときは近い。
今夜、眠りに就いてはいけない。
耐えて、強くなりなさい。
崇拝していたものが
ついに現れるのだから。
眠りに落ちればもう取り返しがつかない。
モーゼも一晩、起きていた。
そして樹木に光を見たではないか。
モーゼは夜通し歩いた。
十年も
輝く樹木を見るまで歩いたのだ。
またムハンマドは馬に乗り
夜の空を飛翔した。
昼は仕事のため
夜は愛のためにある。
でも魔法にかけられないようご用心。
誘惑に負けた人は寝てしまうのだ。
恋人たちに、夜の眠りはない。
暗闇のなかに座り、神に話しかけている。
神はダビデに言う、
一晩中眠る人々は神とつながっていると主張するけれども
それは真実ではないと。
愛する者のことがあちこちで噂になれば
恋人はおちおち眠ることができない。
喉の渇いた者が
ほんのわずか眠りに落ちても
水の夢ばかり見るように。
小川の横に置かれた水瓶
他の人からもらった霊験あらたかな水
そんな水の夢ばかりを見るのだ。
一晩中、会話に耳を傾けよ。
起きているのだ。
この瞬間を生きるために。
死はすぐにやってくるだろう。
あなたはこの世を去ることになるだろう。
恋人のいない大地は
茨にまじって雑草が生える空き地のようなもの。
私は耐えるだろう。
暗い夜、残された詩篇を読むだろう。
ああでも、自分の頭も、足も、本当にあるのかわからない。
シャムズよ、
タブリーズの人々に愛されたシャムズよ、
私は唇を閉じたまま
あなたが来て開けるまで待つだろう。