シャンバラとケサル王 (宮本編)
マテオ・ピストーノ 『ブッダの影』
*ここにシャンバラは出てこないが、ニンマ派高僧ド・キェンツェ(1800−1866)の幻影にケサル王が登場する。ケサルが語ったことは予言であり、中国によってチベットの仏教が衰退するというその内容は当たっているように思われる。
土・鳥の年(1848年)、並外れた、エクセントリックでさえあった高僧ド・キェンツェは幻視を見た。そのなかで神話的存在であるケサルは彼に、チベットにおいてブッダの教えは、清朝政府からも、アムゴン(ニャロン、すなわち四川省新竜県の首領の呼び名)からも切迫した脅威を受けているが、彼らは互いに戦わせておけばいいと助言した。
悪魔の間に戦いがある。
イタチのような頭の中国人の殺し屋と
赤い顔のニャロンの悪魔の間に戦いがある。
彼らは彼ら自身の行為によって、勝ったり負けたりするだろう。
彼らを助ける必要も、害する必要もない。
将来、この戦争が勃発するとき
中国の悪魔が勝利を得るだろう。
そしてブッダの教えは傷つくだろう。
もしニャロンの悪魔が勝ったら
無垢の者たちが災いに巻き込まれるだろう
それゆえ双方にたいし距離を保ちなさい