混沌と無極
無極とは文字通り「極なし」「限界なし」「分化なし」「未分化なるもの」を意味する。宇宙創世のはじめにおける、未分化の存在があるだけの原初の状態に相当する。中国の宇宙創世神話においてこの状態は「混沌」と呼ばれる。混沌とは文字通り、「カオス」「めちゃくちゃ」「混濁」「混乱」を意味する。混沌は、未分化の物質が根本的に陰と陽に分化する前の原初状態に相当する。この状態は定まった形のない、境界のない輝く雲のようなものである。すなわち非特異的な、未分化の潜在的な力の状態である。無極と混沌は下図のように、からっぽの円で表される。この円は「一なるもの」を表している。瞑想実践中にわれわれが入ろうとする空間である。道教の内丹(内なる錬金術)の実践において、天形成以前の原初の状態である。人は内なる存在を再形成するため、そして統一した、完璧なる人間になるため、そこへ戻っていく。