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 要塞をこっそり抜け出して、エメルはドルイド僧を訪ねた。彼は自分の小屋のなかで、薬の瓶と経典類に囲まれて座っていた。ストーブの上には調合された液体がぐつぐつと煮られていた。

 ドルイド僧は彼女の悲嘆の物語に耳を傾けた。夫との会話すべてをありのままに話した。彼女がどのように感じているか、怒りがどれほどのものか語った。

「それでわしに何をしてもらいたいんだね?」と彼はたずねた。

「わたしに毒を分け与えてください。クー・フーリンを墓場に送ってやりたいの。そこにいるなら、彼はわたしのものだわ」

「行き過ぎた解決策ですな。そんなに簡単に考えなさいますな。わしにいい考えがあるのじゃ」

 彼は調合薬の中から琥珀色の溶液が入った瓶を取り出し、彼女に渡した。

「これを持っていきなされ。デオグ・デルメイド、すなわち完全忘却の薬じゃ」

 ドルイド僧はこの薬の使い方について彼女に教授した。エメルは彼に感謝の言葉を述べ、要塞に戻った。彼女は薬を調合し、エールの入ったカップに入れ、クー・フーリンのところへ持っていった。

「わが愛する夫よ、これをお飲みください」彼女は言った。「ともに過ごした日々に乾杯しましょう」

「喜んで」クー・フーリンは言った。

 彼は一杯のエールを飲み干した。その瞬間に全身に震えが走った。すると突然最近の記憶すべてが消えた。ティル・ナン・オグにいたことも、ファンドとの関係も、彼女のもとに戻るという約束も、すべて記憶から消えたのだった。まるで何も起こらなかったかのようだった。彼は妻を見て、愛情のこもった笑みを浮かべた。

 つぎに妻も忘却薬が入ったエールを飲んだ。夫とおなじように最近の記憶がなくなった。クー・フーリンがティル・ナン・オグに行ったこと、妻と別れると決めたこと、彼を毒殺しようと考えたことなど、すべてが忘れ去られた。何も思い出すことができなかった。彼女は夫の笑顔に視線を戻した。

 忘却の薬は夫婦の仲を戻したのである。

 


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