(3)

 お城は遠くに蜃気楼のようにかすかに見えた。エルフランドへの道はまっすぐ門に向かって伸びていた。

 この間ずっとトマスの心境はどんなぐあいだったのだろうか。彼にはキスによって魔法がかかっていた。トランスがかった者ならだれでもそうであるように、彼は起こっていることをそのまま受け入れた。ひとつの考えに彼はとらわれていた。つまり、女王のおともをして、彼女のために身を尽くさなければならない、と。

 お城に着いた彼らは馬に乗ったまま中に入った。ホールでは晩餐会が行われていた。長いテーブルに腰かけているのは何十人もの妖精たちだった。彼らは食べたり、歌ったり、笑ったりしていた。召使たちは忙しく食べ物がのった大皿を運んでいた。道化師がテーブルからテーブルを回り、おどけてみせた。陽気だが、乱痴気騒ぎといってもよかった。

 女王はテーブルの上座に坐った。そしてトマスに隣に座るよう命じた。彼らには美酒がふるまわれた。彼の耳元で女王はリラックスするように、そして楽しみなさいとささやいた。そして彼女はテーブルの端を持ち上げているデブの妖精を指さした。それは妖精の国の王、つまり彼女の夫だった。彼のことは無視しなさい、と彼女は言った。

 彼らは実際王のことは無視した。その晩、彼らは恋人同士になった。その後七日間、彼は女王のために詩をよみつづけ、楽しんで彼女のお供をした。しかし八日目、彼女はトマスにすべては終わったと告げた。もう妖精の国を去り、家に帰らなければならないと言った。彼はあらがったが、どうしようもなかった。囚われの期間は終わったのである。

 女王は彼を川岸まで送り届けた。彼女は詩をよんでくれたことに感謝し、お礼としてリンゴを一個トマスにプレゼントした。「感謝のしるしよ、受け取って。予言の才能を授けることになるの」

 最後に彼女は呼ばれれば彼のもとにやってくると約束した。そして馬に乗って森の中へ戻っていった。

 


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