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老人が語り終えたとき、オゲ・マケは彼が話したことを自身真実と思うかどうかたずねた。パイユート族の老人はタバコをくゆらせし、しばらく黙りこくった。それから彼はそれは首長の想像の産物だったかもしれないと認めた。妻を失った嘆きと山の中の孤立がないまぜになってそんな心の状態になったのではないかというのである。
しかしそのとき老人は山のほうをしぐさで示した。
「後ろのパナミント山脈の壁をごらんなさい。そこに光や岩の陰に隠された巨大洞窟がいくつあると思いますか。いったいいくつの外から見える、あるいは内側に広がる、あるいは決して見えない洞窟があると思いますか。いったいいくつの空飛ぶ船が夏の夜に、鷲のように舞い降りると思いますか。いったいどれだけのハヴ・ムスヴ族の人々が、白人の銃の音がしない、永遠の平和なる、はかり知れないほど大きな要塞に住んでいると思いますか」
火をじっと見つめながら彼は言った。「ここはいつも謎の多い土地でした。何も変わってはいないのです」
彼はパイプをオゲ・マケに渡した。オゲ・マケは山なみを見ながら、この中に何があるのだろうかと不思議に思った。
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