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 彼らは崖の上に降り立った。ガイドはモーガンにさよならを告げると上方へ飛んで戻っていった。そして視界から消えた。ローブを着た人物が彼に近づいてきた。モーガンはひざまずいた。

 

 波乱にとんだわが人生のなかでもこれに類することはなかった。この瞬間に味わった苦悩を近い表現で表すなら、わたしにとりついている、あるいは圧倒している荒廃した感覚は、難破船の船員や閉じ込められた炭鉱夫が感じる感覚だった。光はつねにあり、わたしがどこに行ってもまわりを照らした。しかし暗闇もあった。言葉では言い表せない暗闇である。それは言い難い精神的苦痛でもあった。

 

「友よ、こちらに来なさい」とローブを着た男は言った。「知られざる国の領域に入りましょう。すぐにあなたの幻影のもとになったもの、人類の希望を見ることでしょう。そしてエティドルパの地で安らぎを得るでしょう」

 

 手を組んでわたしたちは平和と安静の領域に入っていった。前に進んだり、上がって行ったりして、そこへ至ると、完全なやすらぎが傷ついた魂を包み込んだ。以前の思考はすべて消えた。生きる上での心配事は去っていった。惨めな気持ちも、憎悪も、羨望も、嫉妬も、不浄な情熱もなくなった。依然としてとらわれたままの愛する者への愛を除いて、そして魂から魂へと伸びる悲しみの糸がわたしたちを結びつけているのを除いて、過去は真っ白になった。わたしはエティドルパ、すなわち地の果てに着いた。

 


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