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 パーマーは「未来の人類への警告」を二つの面で改変した。第一に、内容をパルプマガジン向きに変えた。

 私は1ページ目の最初の言葉から着手した。事実とされる内容をフィクション雑誌にふさわしい物語に変えたのである。活気のない、退屈な文字の羅列になるところに、会話をさしはさむことによって、ミュータン・マイオンやアール、その他の登場人物が、話の筋の中で、実際にしゃべり、動き、呼吸をしだすのである。原文の1万語の原稿にはイマジネーションに限界があるが、それにアクションや対話、ロマンス、謀略、プロット、サスペンス、それにパルプマガジンならいいアクション物語と評されるようなものを加えてストーリーを紡ぎだすのだ。それにシェイヴァーは編集者による改変を拒まなかった。それがメッセージを伝える唯一の方法であると理解していたからである。

 第二に、パーマーはシェイヴァーの描写を「種族の記憶」ととらえた。転生という言葉がふさわしいだろう。すなわちシェイヴァーは前世の記憶を思い出しているのである。パーマーはこの改変に関しては後悔するようになった。

 私は全面的に「刈りこみ」をおこなったが、ひとつの例外を除いてシェイヴァー氏の原稿の実際の部分の基盤を変えることはなかった。一か所だけ私は大きなミスを犯した。シェイヴァー氏が実際にアルファベットや「人類の未来への警告」、彼が説明するすべての科学に関することを、実際の地球内部の洞窟やそこに暮らす人々から得たとは、信じることができなかったのだ。そのかわりに私は彼の思考の記憶を「種族の記憶」に翻訳した。こうすれば読者も納得するだろうと考えたのである。

 多くの読者はそれでもなお「私はレムリアを覚えている」が、実際何に基づいているのか、聞きたいだろう。しかしパーマー自身は何の疑念もいだいていない。

 私はそういった理由から種族の記憶としての物語を世に送り出した。しかし私が世に送り出したのは、ほかの何か、なのだ。私はシェイヴァーを信じる。なぜなら私は彼という人間を信じているからだ。私自身の人生のなかで、私はおなじ分野――神話学として――の研究をしてきたが、シェイヴァーはそれを徹底的に調査してきたのだ。だから私はそれらに「真実の物語」というラベルを貼りたい。

 パーマーは37の注釈をつけて、科学的、歴史的、言語学的重要性を説明しながらシェイヴァーの文を雑誌に掲載している。とくに「私はレムリアを覚えている」は、多くの点で説明する必要があった。

 物語ははるか遠い昔、古代レムリアの最後の日々が舞台である。レムリア人は太陽から放たれる破壊的な光線から逃れるために地下の洞窟に避難していた。しかし最終的にかれらは地球を完全に捨て、遠い惑星に移住する決断を下す。

 しかし地球から旅立つ前に戦争が勃発する――デロとの戦いである。凶悪の矮人の種族、デロは悪の権化だった。かれら自身の洞窟からデロはレムリア人を攻撃した。デロを率いるのはレムリア人の裏切り者ザイトだった。彼のおかげでデロの軍隊は進化した武器を備えていた。

 物語の語り手であるミュータン・マイオンは戦争で捕らわれの身となった若い芸術家である。彼は、タイタン人であり、レムリアの長老のひとりであるヴァヌー王女との謁見を許される。玉座に座ったヴァヌー王女は豊穣の女神だった。8フィート(230センチ)の高さがあり、ラフな着こなしをして、性的エネルギーに満ちていた。(彼女の前にひざまずき、片方の足に触れたとき、ミュータン・マイオンはなんとも言い難い喜びを体験した) 長老会議の場で彼女は彼を小さな人形であるかのように軽く持ち上げ、仲間のタイタン人たちに紹介した。

 若き芸術家もデロと戦うタイタン人に加わった。勇敢で、臨機応変の才があり、戦士であることを彼は証明した。地球の中心で激しい戦争が起きていた。デロは敗北し、ザイトは捕らわれの身となった。そしてレムリア人たちは遠い惑星への移住の準備をはじめた。

 ミュータン・マイオンには使命が与えられた。レムリアの歴史を書くよう要望されたのである。それが刻まれた金属板は洞窟のいたるところに保管された。この歴史は未来の人類に発見されることになるだろう。それは人類への警告となり、同時に希望のメッセージとなるはずである。

 このような物語が1945年3月号のアメイジング・ストーリーズ誌に掲載されると、パーマーいわく、「投書の洪水」が押し寄せてきたのである。シェイヴァーによる物語はそのあとも生まれ続けた。宣伝文句はつぎのようなものだった。「いままで出版されたもののなかでもっとも驚くべきレムリアの物語。これが真実であるかどうかは、ご自身で判断を。あなたが読むこれらの物語はあなたの心を射止めるだろう!」

 しかし物語はもはや「種族の記憶」ではなかった。シェイヴァーはたんなる白昼夢を見る人になってしまったかのようだった。だれもが前世を想像することくらいはできるものだ。シェイヴァーがそうであったように、地下世界へ入り、地底人の間で暮らし、レムリア人たちによって彫られた古代の金属板を発見するのはまったく別の話である。

 このような主張によっていわゆる「シェイヴァー・ミステリー」と呼ばれる論争に火がついたのである。



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