天神三兄弟
天地のはじめの時、大地に人家はなく、森もなければ動物や鳥の姿もありませんでした。山もなければ田んぼもなく、あるのはどこまでも広がる大きな海だけでした。
それからどれだけの年月がたったのでしょうか。ある日、ドゥグ、ジャング、ゴングの天神三兄弟が天から地上を見守っていたのですが、眼下に広大な海しかないことが心苦しくなってきました。そこで三兄弟は話し合い、いっせいに海に飛び込みました。
彼らは海底までもぐり、ひとりずつ大きな岩を掘り出すと、海底に三角形のかたちになるように巨石を置きました。それから彼らはもっと大きな岩を掘り出すと、三日三晩かけて鍋をつくりだしました。そして三角形に岩を並べてつくった鼎(かなえ)の上に、その石鍋を置きました。
天神三兄弟はおなかがいっぱいになるまで水を吸い上げました。それからその水を石鍋のなかに吐き出しました。海水はすべて石鍋のなかに入ったのです。彼らは巨大な石板をふたとして石鍋の上に置きました。そして大石板の上に神の土をまきました。
天神三兄弟がそうして石板の上に土を盛っていくと、土はどんどん厚くなり、平原や草原を形成しました。こうしていくうち神の土は少なくなったので、工夫をこらしながら土をまくと、山脈や深い谷ができました。天神三兄弟がペマガンに来たとき、神の土はほとんどなくなりました。そのため三兄弟が残りの土をまくと、そこにとても高い山ができあがったのです。
大地はこうしてうまくできあがったのですが、天地の間に光がなかったので、真っ暗でした。三兄弟は、これはよくないと考えました。
そこで長男ドゥグが上から石板に穴をあけ、海水の力を用いて三界をかき乱し、太陽をねん出しました。
二男ジャングは石鍋の力を用いて三界をかき乱し、月をねん出しました。
三男ゴングは力を用いて北斗七星を呼び出しました。
このとき以来、天地のあいだに光が存在するようになったのです。