天神降臨 

 昔むかし、天上の光明世界にチリン(spyi ring)、ユリン(g-yu ring)、ユセ(g-yu se)という天神三兄弟がいました。地上に暮らしている人々は、彼らに地上に降りてきてもらい、彼らの王となるよう懇願しました。

天神ユセがまず降臨し、セジリ(se byi li)四兄弟をもうけました。ユセはトン氏十八部族と戦いをはじめ、形勢が不利になると、兄のユリンが降りてきて助け、敵に完勝し、彼らをみな奴隷としました。

 ユリンは人間世界がすっかり気に入って天界に戻らず、ム氏の美しい娘ムサ・テンブ(dmu bza’ ldem bu)を娶りました。彼女はマサンら7人の子供を生みました。七兄弟のうち上の6人は「ムタ」と「ギャンタ」と呼ばれる2本の縄をつたって天界に戻りましたが、一番下の弟マサンだけが母親とともに地上に残りました。

 マサンは長じると、父親とおなじように人間の娘を娶り、トツェ・バンポタ(thog tsad bang po stag)という子供をもうけました。バンポパは竜女ルジャンタマ(klu lcam pra ma)を娶り、男の子をもうけました。ふたりは子供にルツァ・タポウーチェン(klu tsha stag po ‘od can)と名づけました。