アク・トンパ物語 

国王の膝の上にウンコを落とす 

 

 昔、チベットのさまざまな地域にたくさんの国王がいました。トンパおじさんはそのうちのある国王の親しい友人だったので、秘書の仕事をもらいました。この国王自身は読み書きができませんでしたが、仏教を熱心に信仰していました。

 はじめ、おじさんはよく仕事をしたので、国王も喜んでいました。しかしある日国王は何かのことで、おじさんのことがすごくいやになったのです。それでおじさんを罰することにしました。国王はおじさんに着ている服をすべて脱ぎ、宮殿の屋根の上に出るように命じました。おりしも一年でいちばん寒い時期でした。かわいそうなことに、おじさんは一晩中寒さにぶるぶる震えなければなりませんでした。

 翌朝早く、おじさんはかつて宮殿の壁を白くするために貼った白いライムをそぎ落とす作業をしました。しばらくするとそぎ落とされたライムは床を覆うほどになりました。それからおじさんは、山積みになった白いライムのゴミの上でウンコをしました。そして持っていた棒を手に取ると、ウンコに一刺ししました。それはすぐに凍りました。なぜならとても寒かったからです。おじさんが手に持った、凍ったウンコが刺さったままの棒の先にはライムが平らな底のようになっていました。その上におじさんは言葉を書き入れました。

 トンパおじさんが明かり取りから下を見ると、そこは国王の仏間でした。仏像やその他の神像が並ぶ壇の前で、国王は足を組んで坐り、瞑想をしていました。おじさんはそこから凍ったウンコを落としました。そこは国王の膝の上でした。

 瞑想をしているときだったので、国王は驚いて跳ね起きました。膝の上に落ちてきたものをよく見ると、その物体の裏に何か書いてあります。

 国王は字が読めなかったので、召使いにトンパおじさんを呼んでこさせました。寒さでぶるぶる震えていたおじさんは暖かい朝食にありつくことができました。

 しばらくして国王はおじさんに、「奇跡のウンコ」の文を読むよう命じました。おじさんは三度叩頭して、国王の玉座の下につつましやかな姿勢で坐りました。彼はウンコを取り上げると、裏面の文を大きな声で読み始めました。

 

木の取り手がつきし、白き面の 

天から降りしウンコなり 

このうえなき幸運なるは国王なり 

それがしも膝の上に落ちしとは 

 

 おじさんは驚いて立ち上がり、言いました。

「ああ、国王様。国王様はなんと幸運なお方でしょう。これは天から降ってきたウンコです。だれが落としたのであろうと、それを受け取った方は地上でもっとも幸運な方なのです。感謝のしるしにそれを少しかじるといいでしょう」

 国王はそれを手に取って額に当て、少しかじりました。残りは仏壇に捧げました。トンパおじさんは敬礼をしたあと、どこかへ消えてしまいました。