アク・トンパ物語 

運搬人になる 

 

 トンパおじさんは一文無しになったので、外に出て金を稼ぐことにしました。そこで長い縄だけを手に持って、ラサへ向かいました。ラサに着くとおじさんはあたりを見回し、運搬人たちが集まって仕事を待っているのが見えました。おじいさんもそこに腰を下ろし、彼らといっしょに仕事を待ちました。しばらくすると男が現れ、おじさんを含む運搬人たちに向かって叫びました。

「わしは陶器がたくさん入った箱を持って家に帰るところだ。これを運んでくれた人には報酬として三つのよきアドバイスを差し上げよう!」

 これを聞いていた運搬人全員が無視をしました。しかしおじさんは考えました。

「お金のようなものはいつでも稼げるものだ。しかしよきアドバイスなんてものは得難いものだ」

 そこでおじさんは男の前に出て言いました。

「私が運びましょう」

 両者は合意し、おじさんは割れやすい陶器でいっぱいの箱を運びました。しばらく進んだところでおじさんは男にたずねました。

「よきアドバイスのひとつをいまいただけないでしょうか」

 男はこたえました。

「腹いっぱい食うよりおなかが減るほうがましだ、などと言うやつは信じるな」

「それはいいアドバイスですね」

 彼らはしばらく歩きました。そしてまたおじさんは男に言いました。

「そろそろ二番目のアドバイスをいただけないでしょうか」

 男はこたえました。

「馬に乗るより歩くほうがましだ、などと言うやつは信じるな」

「ほんとにそのとおりです。それもいいアドバイスです」

 彼らは歩きつづけ、男の家にたどりつきました。おじさんはたずねました。

「では三つめのアドバイスをいただけますでしょうか」

「おまえよりばかな運搬人がいるなどと言うやつは信じるな」

 すると突然おじさんは箱に結んでいた縄をゆるめました。箱は地面に落ちて、なかのものがすべて砕ける音がしました。

 おじさんは男に言いました。

「陶器は壊れていないなどと言うやつは信じるな」