アク・トンパ物語 

女房が死ぬ 

 

 トンパおじさんの口やかましい女房が、長い闘病生活のすえに亡くなってしまいました。その日の朝、おじさんは涙が枯れるまで泣き叫んで、言いました。「ああ、もうそんなに長くはないよ! そんなに長くはないよ!」

 村人たちは考えました。「ああ、かわいそうなおじさん! 後を追ってすぐに死にたいと叫んでるぞ」。それで村のだれもが食べ物やチャン(大麦から作る発酵酒)を持ってきて、おじさんを慰めたのです。彼らは言いました。「奥さんが亡くなってご愁傷様です。でもあなたには長生きしていただきたい」

 しかし夕方になる頃には、おじさんは食べ物とチャンに囲まれて酔っぱらっていました。そして彼は笑い、歌い、踊っていたのです。それを見てショックを受けた村人たちは、おじさんに尋ねました。

「いったいどうしたんですか? 朝はもう長くは生きられないっておっしゃってたじゃないですか。それなのにいま、笑いこけて、踊って、歌を歌っているなんて!」

 おじさんはこたえました。「まあ、それはそんなに長く喪に服するわけではない、という意味だったんだけどね。もうすぐ死ぬなんて一言も言ってない。喪はもう終わり。そうだよね? いま楽しんでるんだよ」