アク・トンパ物語 (その他のエピソード3)
愚者キャクー
我々のもの
むかし家の外で教える教師がいました。彼の生徒のひとりはすぐれているとは言えなかったので、ほかの生徒からキャクーと呼ばれていました。キャクーとは「糞バカ」という意味です。
教師は読み書きだけでなく、エチケットや話し方、ふるまい方などについても教えました。
ある日キャクーが教師といっしょに勉強していると、丘から教師のヤクが戻ってくるのが見えました。「先生、先生! 先生のヤクが丘から戻ってきます!」
教師は彼に言いました。「<あなたのヤク>というのは正確ではないな。教師も生徒もひとつの大きな家族に属しているからね。だからきみには<我々のヤク>が丘から戻ってきた、と言ってほしいね」
教師の言葉を心にとどめたキャクーは、まわりのすべてのものが<我々の>と呼ぶべきものだと考えました。
ある日、教師に何人かの来客がありました。彼の妻は水を汲みに行き、戻ってきました。キャクーは彼女の様子を見て報告しました。「先生! 先生! 我々の妻が戻ってきます!」。客はみな口をぽかんと開けていました。