金のイヤリング
チベットではほとんどの結婚が見合い結婚です。未来の花婿が家から家へとまわり、娘の親たちに会って求婚するのです。それから親たちはこの若い男と面会して話をします。
むかし、村に若い男がいました。彼は結婚適齢期の娘がいる三つの家族の家を訪ねることになりました。この若者は金持ちではなかったので、金のイヤリングを借りて耳に着けました。これは相手方の家族に好印象を与えるためです。彼はいい服を着て、さらにキャクーにお伴をしてくれるよう頼みました。キャクーは快諾し、ふたりは出かけました。
習慣にしたがえば、花婿候補のお伴は彼を相手方の両親に紹介する役目があります。「こちらがあなたがたの将来の義理の息子です。彼はとてもすばらしい服を着てますね。でもイヤリングは彼のものではありません」
このことで両親は興味を失ってしまいました。こんな見栄っ張りのところに娘はやりたくありませんでした。
二番目の家族のもとへ向かう途中、若者はキャクーに尋ねました。「どうしてイヤリングが自分のものではないってことをばらしたの?」。キャクーはこのことをもう言わないと約束しました。
二番目の家族の家に到着しました。キャクーは若者を娘の両親に紹介しました。一通り説明をしたあと、彼は付け加えました。「ああ、ところでこのイヤリング、彼のものではないんだけどね」
これはとても奇妙に聞こえました。今度の家族もまた娘を嫁に行かせるのを拒否しました。
三番目の家族のもとに行くとき、若者はキャクーに文句を言いました。「なぜきみはぼくのイヤリングのことを言いつけるんだい? 何も言わなきゃいいじゃないか」
彼らは三番目の家族の家に着きました。キャクーはまた義理の息子になりたがっている若者を娘の両親に紹介しました。でも最後に付け加えました。「わたしに彼のイヤリングのことは尋ねないでください。それについては何も知らないですから」。
この三番目の家族も花嫁にやるのを拒否しました。