ジュゼッペ・トゥッチ チベットの宗教 第7章
ボン教(ポン教)
ボン教は、今日にいたるまで仏教の影響が色濃く残ってはいるものの、チベットの土着の宗教である。(Bonはチベットの国の名、BodあるいはBod yulでもあった)
ボン教僧院やボン教寺院はチベット全体に分布している。とくに東チベットに数多く、政治的にはネパールに属するが、文化的、言語的にはチベットの一部であるロ地区(bLo、すなわちムスタン)のような西チベットの辺境地域にも多い。シガツェの近くに重要なボン教僧院が複数あるものの、チベット中央部にはそれほど多くない。
このように、われわれが論じているこの宗教がいまも生きていることがわかる。それは熱狂的な信者、信仰の拠点となる場所や僧院を持っているのだ。それはチベット仏教〔原文はラマ教〕ばかりの社会のなかで、ボン教を抹殺することもできたチベット仏教から概念や教義を拝借して生き延びてきた。
論考の最後にわれわれはボン教を持ってきているわけだが〔トゥッチ著『チベットの宗教』全7章の7章めがこの「ボン教」である〕、それというのも、とくに第6章「民間宗教」において、あるいは他の章のチベット仏教の特殊な面の描写のなかで、ある程度ボン教の理解が進んでいると思われるからである。
(つづく)