クンブメーラ祭での不思議なできごと 

 プリヤ・ナート・カラル、のちのスワミ・シュリ・ユクテシュワルは1894年、アラハバード郊外のガンジス川、ヤムナ川、伏流のサラスワティ川が交差する地点(プラヤガ・ティルタ)で行われるクンブメーラ祭に、巡礼を兼ねて参加した。クンブメーラ祭には修行者(サドゥー)や聖人、また何千人という善男善女が宗教的、精神的な恩恵を求めて集まってきた。(現代では何千万人という群衆が集まり、歩行者の一方通行規制が敷かれるほどごった返す)

 プリヤ・ナートはヤムナ川のアラハバード側に居を構えた。しかしある日、周辺があまりにも人が多かったので、彼は小舟に乗って対岸のジュシと呼ばれる地区に渡った。彼はベンガル商人風の純白のドティを着て、杖を持っておしゃれなパンジャブ人風を気取り、キリスト教の教えとヒンドゥー教の霊性の観念の類似点について思いをめぐらしながら、川の土手に沿って歩いた。クンブメーラに集まったおびただしい数のサドゥーたちを見ながら、アメリカでも西欧でも、潜在的に霊的能力がすぐれているのに、通常の生活を送っている人がどれだけいるのだろうか、と考えていた。

 そんなとき突然背後から「スワミジ・マハラジ」という声が聞こえた。しかしまわりには人影がなかった。どちらから声がしたのだろうかと彼はきょろきょろと見まわした。すると遠くにサフロン色の衣を着たサドゥーが手を振り、彼に向かって「スワミ・マハラジ」と呼んでいたのだ。サドゥーは「ババジがお呼びです」と言っているようだった。プリヤ・ナートは、人まちがいなのではないかと思った。というのも彼はサンニヤシ(出家者)にさえなっていなかったので、スワミジ・マハラジ(宗派の長)などと呼ばれるはずがないのだ。

 彼はサドゥーのほうに近づき、つっかかるようにして言った。

「私はサンニヤシではありません。それなのになぜスワミジ・マハラジと呼ぶのですか」

 サドゥーは気おされて下がりながら、「ババジがお呼びです」と繰り返し、テントを指差した。

 プリヤ・ナートはとまどいながらもサドゥーのあとをついてテントのなかに入った。そこには尋常ならざる光に包まれた美しい聖者が座していた。



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