グルから弟子へ伝えるキリスト教
『あるヨギの自伝』のなかで、パラマハンサ・ヨガナンダは師ユクテシュワルからキリスト教の神髄を学んだと述べている。ヒンドゥー教のグルが弟子にキリスト教について教えるというのも、いささか奇妙ではある。
わがヒンドゥーの師から、私は聖書の不滅の神髄を理解し、キリストの言葉のなかに真実があることを学んだ。
そして、イエスを駆り立てていたのとおなじ神の原理にしたがって人生を送ってきたインドの偉大なる大師たちは、イエスと同族なのだという。すなわちシッダ(成就者)はイエスであり、イエスはシッダなのだ。聖書にもつぎのような一節がある、とヨガナンダは引用する。
天にいますわたしの父のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである。(マタイ伝12−50)
ヨガナンダは全面キリスト教の考察一色の著書『キリストの再臨』のなかで、グルと弟子の関係の重要性を指摘する。
霊的な探求を試みていた若いころ、私は幸運にも聖者のような魂とさかんに交流することができた。その「神・意識」によって、わが意識は至高の領域へ高められたのである。しかし神聖なるグルと弟子の関係から生じるパワーを真に理解したのは、神に選ばれたわがグル、スワミ・シュリ・ユクテシュワルに会い、そのグルからイニシエーションを受けたときのことだった。
ヨガナンダは付け加えて、ひとりで勝手にグルになってはいけない、と『キリストの降臨』のなかで注意を促す。
他者を救うためには、真のグルからイニシエーションを受ける必要がある。あるいは他者の罪をあがなうためには、神の声を聞かなければならない。この法則はイエス自身が重んじてきたことである。イエスが聖職を開始する前、グルの祝福を受けていたのである。
イエスのグルというのは、もちろん洗礼者ヨハネのことである。
この「グル→弟子」の系譜は、ラヒリ・マハシャイ(マハサヤ 1828−1895)にはじまる。そしてユクテシュワル、ヨガナンダへとつながる。何が伝授されるかといえば、その根本にあるのはクリヤー・ヨーガである。イエスの教えが根本でありえなかったのは、ヨガナンダからラマイアとニーラカンタンへと伝授されるにおいて、わきに追いやられていることからもわかるだろう。
このクリヤー・ヨーガの系譜は実際のところ多岐に分離し、複雑な様相を呈している。ラヒリ・マハシャイの高弟だけでも、実子のティンコーリ・ラヒリ・マハシャイとドゥコーリ・ラヒリ・マハシャイ、このユクテシュワルのほか、プラバナンダ、ケーシャバナンダ、シャストリ・マハシャイ、パンチャノン・バッタチャリヤ・マハシャイ、ブラジャラル・アディカリ・マハシャイ、マハデウ・プラサドジなど多くの名前が挙げられるのである。
⇒ つぎ