ヨガナンダの不思議に満ちた少年期
ヨガナンダは1893年、ブッダ入滅の地クシナガラに近いゴラクプルに住むベンガル人の家庭に、ムクンダ・ラル・ゴーシュとして生まれた。その数年前、両親はカシー・ババ・ヨギラジ・シュリ・シュリ・シャマ・チャラン・ラヒリによってクリヤー・ヨーガのイニシエーションを受けていた。両親は信仰心の篤いヒンドゥー教徒であるばかりか、実践者だったのだ。
1904年は11歳のムクンダが母親を失った年だった。逝去の少し前、父バガバティ・チャランが仕事に出ている間に、年老いたひとりのサンニヤシ(托鉢僧)がゴーシュ家の扉を叩いた。母ギャンプラバ・デーヴィが扉をあけると、サンニヤシはなかに入ってきて、お守りを渡しながら言った。
「あなたが亡くなって一年後にこのお守りをムクンダに渡すようにしなさい」
それからこう言った。
「ギャンプラバ・デーヴィさん、あなたのお命は燃えつきかけています。じきに病気になり、それがもとでお亡くなりになるでしょう」
さらに付け加えた。
「ムクンダは家庭生活を営むことはありません。現世を捨ててサンニヤシになるのです。サッドグル(真のグル)を見つけ次第、このお守りは消失してしまうでしょう」
彼女はサンニヤシが言ったことを紙に書きとめ、箱に入れ、病状が悪化したときに息子(ムクンダの兄)のアーナンタを呼び、一年後に箱をあけるよう言い残した。
一年後、遺書を読んだムクンダのサッドグル探しがはじまった。その後ムクンダが13歳のとき、一家はコルカタに引っ越した。コルカタでは、ムクンダは何人ものグル候補と会うことになる。そのなかでもマハサヤ大師(マハサヤ・マヘンドラ・ナート・グプタ)は魅力的な人物だったようで、ムクンダは毎日彼の屋敷に通い、できるだけ時間をともにしようとした。
ある日マハサヤ大師の屋敷を訪ねると、大師が屋根の上に立ち(実際はベランダのようなところらしい)、空に向かって大声で笑い、話しかけているのが見えた。ムクンダは大師に「だれと話していたの?」と食い下がった。大師は「母と話したのだ」と答えた。「ぼくも母と話がしたい!」とムクンダは亡き母のことを思いだして言った。マハサヤ大師のいう母とは、おそらく「宇宙の母」のことだった。
マハサヤ大師はさまざまな幻影を見せる特殊な才能を持っていた。大師がムクンダの額と胸に触ると、彼は即座に「身体意識」を失った。まるで宇宙空間のどこかに浮いているかのようだった。彼は四方のすべてを見ることができるように感じた。彼は樹木の内側を地から吸い上げた水分が樹液となって流れるさまをも見ることができた。
この状態のまま、はてしなく時間は過ぎ去った。大師がムクンダのからだに触れると、「身体意識」が戻ってきた。ムクンダはわれに返ったのである。
圧倒されたムクンダは大師の足元にひざまずいて自分を弟子にしてくれるよう懇願する。しかしマハサヤ大師はこう答えた。
「わしはおまえのグルではない。その人物はもうすぐおまえの前に現れるだろう」
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