アカシック・レコード
リーヴァイは朝2時から6時にかけての絶対的「静寂の時間」に懸命に神の言葉を写し取った。どこから写し取ったかといえば、それはアカシック・レコードだった。
アカシック・レコード(アカシャ年代記)といえば、エドガー・ケイシーを思い浮かべる人が多いかもしれない。しかしリーヴァイのほうが一世代上なので、直接影響を与えたのはルドルフ・シュタイナーだろう。あるいはアカシック・レコードという概念を生み出した神智学協会、とくにブラヴァツキー夫人に求めるべきかもしれない。
シュタイナーは『神秘学概論』のなかで、アカシック・レコードについてつぎのように述べる。
可視世界から不可視世界を感知できる者ならば、目の前に広がる巨大な霊的パノラマとでもいうべきものを見ることができるだろう。そのパノラマには、世界で起こったあらゆることが記録されているのである。これらすべての非物質的なものの痕跡がオカルト科学においてはアカシック・レコードと呼ばれる。
リーヴァイの妻エヴァは『宝瓶宮福音書』の「イントロダクション」でアカシック・レコードについて説明している。まず、アカシャについて。
アカシャとはサンスクリット語で第一の物質を意味します。すべてのものはそれ(アカシャ)から生まれたのです。宝瓶座哲学では、霊の結晶化を第一段階とみなします。この哲学によれば原初の物質は霊なのです。霊の波動は次第に凝固していくのです。
アカシャ(アーカーシャ)は仏教用語であり、虚空、空などと訳される。この語そのものにはオカルト的な、あるいはニューエイジ的な要素などはない。それに意味を持たせたのはブラヴァツキー夫人の『シークレット・ドクトリン』だった。夫人はアストラル光でできた見えない書板にリピカ(Lipi-ka 書記)によって刻まれる「永遠の絵画ギャラリー」(過去、現在、未来のすべての行為や思考の記録)について述べている。この書板はコーラン85章の「(天に)保管された書板」に触発されたものかもしれない。ただしコーランの書板(lawh)は天にあるコーランの原典といった意味合いである。
エヴァはついでアカシック・レコードについて述べている。
アカシック・レコードとして知られる人生の不朽の記録は至高の知性、あるいは宇宙の心の領域にあります。そしてアカシック・レコードのリーダー(読み手)は聖霊や聖なる息吹と密着していなければなりません。古代の大師たちはそれを至高の知性と呼んでいました。
また、リーヴァイが女神ヴィセルからもらった言葉をエヴァは記している。彼はその言葉を聞いて、一生を費やし、アカシック・レコードから福音書を読み取ることになるのだ。
よく聞きなさい、人の子よ。人はキリスト(救世主)すなわち神の愛について知らなければなりません。愛はすべての人の痛みへの崇高なる香油であり、あらゆる病への癒しです。そして人は知恵を、力を、理解する心を身につけなければなりません。アカシャ年代記を、女神ヴィセルの記録のギャラリーをごらんなさい。ここには生きるもののすべての思考や言葉、行為が書き記されているのです。
実際にどんなものを見たにせよ、リーヴァイにミスティック(神秘主義者)としての天賦の才があったことはまちがいないだろう。もしかするとエドガー・ケイシーやラーマクリシュナのように、トランス状態のもとで隠された秘密と接触していたのかもしれないのだ。
⇒ つぎ