ニューエイジのための福音書       宮本神酒男 

 『宝瓶宮福音書』は22部182章から成る。このうちイエスの失われた17年の間の旅に関するのは7部37章、つまり全体の2割にすぎない。いや新約聖書の福音書はその時期のことにまったく触れていないのだから、2割も、というべきだろう。

 新約聖書のマタイ伝が28章、マルコ伝16章、ルカ伝24章、ヨハネ伝20章であることを考えれば、『宝瓶宮福音書』の182章は聖書一冊に匹敵するほどの分量を擁しているといってもいい。

 各部のタイトルを列挙しよう。

1部 イエスの母マリアの誕生と前半生

2部 先駆者ヨハネとイエスの誕生と幼き頃

3部 ゾアン(エジプト)におけるマリアとエリザベツの教育

4部 先駆者ヨハネの子供時代と早期の教育

5部 イエスの子供時代と早期の教育

6部 インドにおけるイエスの言行録

7部 チベットと西インドにおけるイエスの言行録

8部 ペルシアにおけるイエスの言行録

9部 アッシリアにおけるイエスの言行録

10部 ギリシアにおけるイエスの言行録

11部 エジプトにおけるイエスの言行録

12部 世界七賢人のつどい(アレクサンドリアにて)

13部 先駆者ヨハネの伝道

14部 イエス、荒野の誘惑を耐えたあと、宣教開始

15部 宣教一年目。神殿での説教。ヒーリング。

16部 二年目の過ぎ越し祭とイエスのキリスト教宣教

17部 三年目の過ぎ越し祭とイエスのキリスト教宣教

18部 裏切りとイエスの逮捕

19部 裁判とイエスの処刑

20部 イエスの復活

21部 イエスの霊的身体の物質化

22部 キリスト教会の確立

 

 このようにイエス幼年時代のエジプトをのぞくと、第6部から第12部までが「失われた17年の間」のイエスの遍歴にあてられている。インド15章、チベットと西インド2章、ペルシア4章、アッシリア2章、ギリシア3章、エジプト14章という割合をみると、インドとエジプトがもっとも重要な地域であることがわかる。

 これは19世紀末から20世紀初頭にかけて、インドの仏教やヒンドゥー教、エジプトのヘルメス信仰などが欧米でブームになっていたことと無関係ではないだろう。というより神智学協会のオリエント趣味、エジプト趣味を反映しているのかもしれない。




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