アフマド、暗殺容疑で拘束される
アティムがアフマドの「15か月以内に地獄に落ちるだろう」という予言を聞いたのはレーク・ラム惨殺事件よりも前だが、アフマドの予言はほとんど予言というより脅迫のようだった。予言と称して刺客を送ることもありえたのだ。
アティムは1896年7月に死んだ。予言は15か月だが、実際の死亡は3年と2か月後のことだった。予言が当たったというべきかどうか、微妙なところである。
アフマドはまた、討論の相手だったマーティン・クラークの暗殺を企てたという嫌疑をかけられ、拘束された。実行犯として逮捕されたのは、ひょろながいアブドゥル・ハミドという名の若い青年だった。しかしその見かけと言えばなまけもので、ふらふらしていて、ごみ箱を漁ってどこにでも寝ることのできる、いわばホームレスだった。裁判長のダグラス大尉は不審な点が多すぎると感じていた。
ダグラス大尉は宣教師グループと引き離して別個に取り調べを行うことにした。担当したル・マルシャン警察署長の前で、アブドゥル・ハミルは泣き崩れながら、真実を告白した。マーティン・クラークを暗殺する計画などなかったのである。実際は宣教師グループが仕組んだことだった。彼らはアフマドを無実の罪に陥れようとしたのだ。
アフマドはすぐ釈放された。宣教師グループを訴えようとすればできたのだが、彼はあえてしなかった。おそらく宣教師たちはアフマドにたいし怨恨の情を抱いていたのかもしれないが、アフマドは気にしていなかったのだ。
レーク・ラムやアティムに対する予言を当てるために暗殺を企てたという嫌疑に関しても、白だろう。そもそも、厳密に見てみるなら、予言はどれも当たっていないのだ。ただレーク・ラムに関しては、アフマドの意向を勝手にくみ取ったアフマドの信者が殺害を実行した可能性はあるだろう。
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