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古代チベットでは、世界は天、気、地の三つの領域に分かれていると信じられていた。これらは、それぞれ天界、地界、下界とも呼ばれる。下界には、私たちの水の精霊に似た姿をしたル(kLu)族がいて、彼らは意のままに蛇の姿に変身できる。この点が後にインドのナーガ族と同一視されるようになった所以である。

これらル族という概念の古さは、幸い、王政の時代(吐蕃時代)の多くの神名に由来する名前によって裏付けられている。ル族の本来の生息地は川や湖、さらには特定の井戸だった。彼らはそれらの底に住居を構え、秘密の宝を守っている。

また木々や岩の間にはニェン(gNyan)族が住み、大地にはサダク(Sa-bdag)、すなわち「大地の支配者」がいる。小さな子供を好んで襲う恐ろしい吸血鬼のような生き物、スリ(Sri)もいる。 ル、ニェン、サダクの特定の領域は時折混同される。あるボン教の文献によると、ルは奇妙な形をした堆積物、カラスの頭のように尖った頂を持つ黒い岩、黒いイノシシの鼻の形をした墳丘、横たわる牛の形をした丘、杜松の木、カバノキ、トウヒの木、二重の山、二重の岩、二重​​の氷河に住んでいると報告されている。

前述の贖罪の詩は、これらの精霊と、付き従う動物たちについて述べている。

 

ル王はあらゆる流れに、

ニェン王は木々や石に、

大地の主は五種類の土に宿る。

そこに大地の主、ルとニェンが棲むと言われている。

彼らの仲間はどのような生き物だろうか?

 

長い針を持つサソリ、

腰に刻み目のあるアリ、

黄金色のカエル、

ターコイズブルーのオタマジャクシ、

白い貝殻のような蝶、

これらが彼らの仲間である。

 

山や谷をさまよい、スレート岩や森、谷に好きなように巣を作るニェンは人間にたやすく腹を立て、病気や死をもたらす。チベットでニェンとして知られる疫病はとくにニェンに起因するとされている。ニェンは山にも棲むため、山の神々と密接な関係がある。力強いタンラ山脈の神で、その名が付く神は、偉大なニェン[ニェンチェン・タンラ]として知られている。

他の多くの山の神々と同様、ニェンチェン・タンラは密教の使徒パドマサンバヴァによって「改宗」され、言い換えれば仏教化されてチベット仏教の神々のパンテオンに組み込まれたと言われている。

「天の白い女神」(ニェンラ・カルモ)はエベレスト山の近くに住んでいて、友好的な5人の「長寿の姉妹」と共に暮らしている。それぞれが特別な池を持ち、5つの池の水はそれぞれ異なる色をしている。ブータンの国境近くには、同名の山脈の神であるヤルラ・シャンポの領域がある。彼は白い男、または白い雄ヤクの姿で現れる。


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