ラカイン礼賛
5 隠れブッダ(3) Hidden Buddhas
わが「隠れブッダ論」を開陳しよう。隠れブッダは、荒廃した草ぼうぼうのなかに忘れ去られたかのように、ひっそりと息づいている。ブッダ(仏像)は煤けていたり、泥にまみれていたり、苔や草が生えていたり、破損していたりする。それでもみじめではなく、趣きがあり、美しいとさえ感じさせる。
ムラウーの市場からさほど遠くない昔の門のわきに、バブタウンというパゴダがある。下からは見えづらいが、仏塔のまわりを黒い獅子たちが守護しているのが特徴である。じつはここからさらに草が繁茂したなかをかきわけながら上がっていくと、あいまから草が生えのびた仏塔が見えてくる。仏塔を仏像と同一に扱うことはできないけれど、隠れブッダというイメージにぴったりの情緒あるものだ。
仏塔のまわりには花が咲き誇っていた。ブッダの慈悲がきれいな花を引き寄せるのだろうか。
仏塔のなかにはいくつものブッダが鎮座していた。草をかきわけ、蜘蛛の巣をはらってやっと仏像に達することができた。仏像そのものには趣きがあまりないけれど、木の葉や枝、草などに覆われて、まさに隠れブッダだった。青々とした枝葉を取り払うと、仏像がにこやかに微笑んだように見えた。
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