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 滞在中彼の動きはスルイという名の老人に監督されていた。シムゾニア人は彼のために居住区をあてがった。スルイは通訳でもあった。彼はいとも簡単に英語を習得することができたのである。そしてシーボーンの指導を担当していた。行政や習慣、マナー、シムゾニア人の慣習について教えた。

 スルイの説明によると、政治形態は民主主義だという。公的業務は大評議会(何十万人もの議員)や一般評議会(百人の議員)、「最高人」と呼ばれるチーフ・エグゼクティブによっておこなわれた。「最高人」は大評議会によって選ばれた。そして生涯その座にあり続けた。彼は日々の状況に関し、一般評議会からアドバイスを受けた。

 評議会はワーシーズ(名士)と呼ばれる人々から成っていた。一般民衆から選ばれたワーシーズは三つの種類、すなわち「よき人」「賢き人」「役立つ人」から成っていた。「よき人」は慈善の心を持ち、正しくふるまい、仲間の市民の幸福を促進する人々である。「賢き人」は知識の積み重ねを加えることで利益を得た国の哲学者。「役立つ人」は実践的な技術を持った人々で、彼らの臨機応変と創意工夫によってさまざまな技術が発展してきた。

 期待とは裏腹に「賢き人」はワーシーズのなかのほんのわずかにすぎなかった。というのも、彼らが追う知識は人々が日々必要とするものとはほとんど関係がないと思われたからである。それではだれがワーシーズに、あるいは「最高人」にふさわしいのだろうか。候補者が脱落するとすれば、それは野心のためである。地位を求める者は、事実上、不適格だとみなされる。シムゾニアは国の利益のみを考える、市民から選ばれたもっとも価値ある者、正しい者によって治められるのだ。

 シーボーンはシムゾニアの政治形態に感銘を受けた――このことをスルイに吐露した。

 

 わたしは国家にすべての有能な人や情報を与えるよう巧みに作られたシステムを、国の統合をはかるシステムを称賛せずにはいられなかった。スルイははっと驚いて、地上の人間は同じように十分注意を払って、名誉、権力、信用の場所を彼らの性格、人生の純粋さ、社会の便利さ、心の善良さで満たすために人を選ばないのか、とたずねた。わたしは事実を指摘されて恥ずかしくなった。そして地上の人間の本当の姿を示しながら「まあたしかに、少なくともニューヨーク州ではおなじですね。そこではわたしはよく知られているのですが」と答えた。


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