ソマレク宇宙開闢 宮本神酒男
Q 宇宙はどのようにして現れたのか、ソマレク。
A 宇宙にははじめ青い大きな海が現れた、ソマレク。
Q 青い大海に何が現れたのか、ソマレク。
A 青い大海には塵が現れた、ソマレク。
Q その塵に何が表れたのか、ソマレク。
A 塵には三つの世界が現れた、ソマレク。
Q 最初の世界は何か、ソマレク。
A 地下のナーガの世界である、ソマレク。
Q 二番目の世界は何か、ソマレク。
A 天の神(lha)の世界である、ソマレク。
Q 三番目の世界は何か、ソマレク。
A 中間の人間の世界である、ソマレク。
Q この三つの世界のあと何が表れたのか、ソマレク。
A このあと三つの山が現れた、ソマレク。
Q はじめの山の名は何か、ソマレク。
A はじめの山は青い葱の山である、ソマレク。
Q 青い葱の山はどの世界に属するのか、ソマレク。
A 青い葱の山は地下のナーガの世界に属する、ソマレク。
Q 青い葱の山には何が現れたのか、ソマレク。
A 青い葱の山には青い鷲が現れた、ソマレク。
Q 青い鷲はどの世界に属するのか、ソマレク。
A 青い鷲は地下のナーガの世界に属する、ソマレク。
Q 二番目の山の名は何か、ソマレク。
A 二番目の山は白い葱の山である、ソマレク。
Q 白い葱の山はどの世界に属するのか、ソマレク。
A 白い葱の山は天の神の世界に属する、ソマレク。
Q 白い葱の山には何が現れたのか、ソマレク。
A 白い葱の山には白い鷲が現れた、ソマレク。
Q 白い鷲はどの世界に属するのか、ソマレク。
A 白い鷲は天の神の世界に属する、ソマレク。
Q 三番目の山の名は何か、ソマレク。
A 三番目の山は赤い葱の山である、ソマレク。
Q 赤い葱の山はどの世界に属するのか、ソマレク。
A 赤い葱の山は中間の人間の世界に属する、ソマレク。
このように終始ソマレクが質問し、ソマレクが答えるという珍しいスタイルを取っている。これはいわばソマレクが神に近い存在であることを表わしている。そうだとするとソマレク=ミル・サムレク説も十分にありえるということだ。
ソマレク話の基本ははっきりしている。天(白)と地(青)と人間(赤)の三層構造である。この構造自体はおそらくさほどめずらしくない。天・地・人の組み合わせはナシ族の祭天(天祭り)のときにも見られるが、これは儒教的なアイデアでもある。しかし対応する色に関しては他に類例を見ない。
ただインド、ラダックの南のラホウル(Lahaul)には、これとほとんど同一の民間伝承が流布しているという。ひとりの人物が問い、答えるという形式もまったくおなじ。しかしサムレクという名前は出てこない。これはいったいどういうことなのか。またひとつ謎が生まれてしまった。
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