神秘家ヴォーン=リーのスピリチュアル・インタビュー 

 

ルウェリン・ヴォーン=リー 1953年、ロンドン生まれ。19歳のとき、ロシア人スーフィー、イリーナ・トゥイーディーと出会い、イスラム神秘主義者スーフィー(ナクシュバンディ―教団)の道を歩み始めた。トゥイーディーの師バイ・サーヒブはヒンドゥー・スーフィーであり、脱宗教的な傾向があった。1991年、北カリフォルニアに移住。ゴールデン・スーフィー・センター設立。

 

序  パット・マセナルティー 

 16歳のときルウェリン・ヴォーン=リーはスピリチュアルな体験をし、それによって生涯歩むことになるスピリチュアルの道へと駆り立てられることになった。その後の3年の間、つぎつぎとスピリチュアルな教えと出会い、それを極めようとつとめた。彼はキース・クリッチロウとともに聖なる幾何学を研究し、ハタ・ヨーガを学び、禅の老師やクリシュナムルティのようなスピリチュアルな導師のレクチャーに通った。19歳のとき、彼はイリーナ・トゥイーディーという年長のロシア人女性と出会った。トゥイーディーはナクシュバンディー・ムジャッディディー・スーフィー教団のスーフィーの師であり、古典的著作『炎の娘 スーフィーの師とともにスピリチュアル修行日記』で知られている。ヴォーン=リーは、彼女の目を見たとき、即座に、そして一点の疑念もなく、本物の師と出会ったのだと確信した。

 何年もの間、彼は、ロンドン北駅の線路の横のワンルームマンションで毎週おこなわれていたトゥイーディーの瞑想セッションに参加した。そこで彼はのち結婚するエナットとも出会っている。夫婦になったふたりはロンドンに家を買い、師を招いて一階に住んでもらい、自分たちは二階に暮らした。この時期の数年間、ヴォーン=リーは高校の英語教師として働きながら、博士号をとるためにユング心理学を勉強している。テーマはシェークスピアにおけるユング心理学の元型についてだった。ヴォーン=リーは「夢の仕事」を探求し、カール・ユングを学ぶことによって得た洞察力を生かし、古代のスーフィーの夢へのアプローチについてまとめた。

 ヴォーン=リーが36歳になったとき、トゥイーディーは彼を後継者に指名した。その直後に彼は教えを米国にもたらすようにとの天命を受けたように感じた。カリフォルニアにはじめて来たとき、彼はマリン・ヘッドランズに立ち、海とゴールデンゲイト・ブリッジを見下ろしながら、ここに自分のライフワークはあるのだと理解した。しかしながらトゥイーディーが存命中は移動するつもりはなかった。年老いた師が生命を全うするまで、自分は英国に残って、師の世話をするべきだと信じていた。自伝のなかで彼はこの信念がもろくも崩れ去ったときのことを回想している。

 ロンドンのある初夏の午後、私はアナトといっしょに台所に立っていた。窓の外には裏庭、緑の芝生、そしてトゥイーディーが愛情をこめて育てたこれから咲き誇ろうとしている花々が見えていた。

 このとき突然ヴォーン=リーは、彼をよろめかすほどの強烈なエネルギーの爆発を感じたという。すると彼の心は変化し、いまこそアメリカに移住すべきだということ、また師の存命中にスーフィー・センターを建てるべきだということを理解した。トゥイーディーは納得し、移住を是認した。

 ヴォーン=リーと妻、ふたりの子供はサンフランシスコ北部のコミュニティーに移り住み、ゴールデン・スーフィー・センターを発足させた。彼は世界中をまわってスーフィーの教えを広めた。彼の教団はアメリカ、カナダ、イングランド、ドイツ、スイス、南アフリカ、スペイン、南アメリカ、オーストラリアなどにおよそ800人の信者を得ている。グループはプライベートの家に集まり、瞑想を実践し、夢のディスカッションをおこなっている。

 ヴォーン=リーは19冊の本を著し、そのなかでスーフィズム、神秘の旅、ワンネス(合一)、精神的エコロジー、神のフェミニン的性質について書き、論じている。私がヴォーン=リーを発見したのは、彼の著書『光の錬金術』を通じてだった。そのなかで彼は世界を変革し、癒していくなかでのわれわれの役割について語っている。自伝『生まれる前の顔』の中で、彼自身のスピリチュアルな旅を、ユーモアたっぷりに、慎み深く描いている。

 過去の十年、彼が書いたものや教えは、ワンネスのグローバルな意識の覚醒と現代の環境機器にたいするスピリチュアルな面の対応の実用性に集中していた。著書『フェミニンの回帰』と『世界の魂』のなかで彼は、アニマムンディ、すなわち世界の魂を癒し、外世界と内世界のバランスを取り戻すことにおいて、女性は特別に厳しい役割を担っていると述べている。

 私はルウェリン、アナト夫妻と北カリフォルニアの彼らの自宅で会った。アナトはルウェリンの著書の表紙を担当しているアーティストである。それは気候のおだやかな10月の朝だった。前夜の食あたりで体調がすぐれなかったが、車を一時間ほど飛ばしてなんとかサンフランシスコ北部の彼らの家にたどりついた。庭園を案内されたあと、私は瞑想ルームに入った。そこは湾に面した窓から差し込んでくる光にあふれていた。われわれが家庭用テーブルに着くと、スコーンと紅茶が出された。そのころには気分もかなりよくなっていた。しかしインタビューの間に奇妙なことが起こった。どうしたことか、ルウェリンに話し始めた途端、私の目から涙がこぼれてきたのである。彼の声、存在には、智慧と愛があった。そんなものに私は出会ったことがなかった。本物の導師の前に私はいるのだと感じた。



⇒ つぎ (インタビュー)