7 善良なる国王のはからいで薬宝を手に入れる 

 ケサルはキャンシェに乗り、善良な国王によって統治されている隣国へ行きました。そこで彼は知識のある学者に変身し、キャンシェを従者に変身させました。 

国王は国の中に突然学識のある学者があらわれたので驚き、すぐにケサルを宮廷に招待しました。国王はケサルを最高の食事でもてなし、シルクの衣や黄金、宝石などを捧げました。 

「偉大なる智者よ」と国王は言いました。「どうかこの王国に滞在してください。そして宮廷で教えてください」 

 ケサルはしばらくの間この王国に滞在し、城から救出した書物の教えを説きました。彼は調和、バランス、また愛や慈愛、知恵をもとにした覚醒した生き方について教えました。 

 国王と国民はすぐに、広い心を持って、わが子を愛するようにすべての生きる者を愛し、楽しく生きることを学びました。彼らはもはや他者を傷つけることはなく、邪悪な心もいつしか消え去っていきました。善良なる王はすべての臣民のことを思い、彼らが幸福になるためにあらゆることをしました。人々の心は明るくなり、表情も輝き、活気にあふれるようになりました。 

 自然もまた彼らの愛やいつくしみにこたえました。それは花が太陽にこたえるのとおなじです。訪れる季節は調和をもち、大地はあらゆるおいしい果実や野菜を産みました。湖や池は純粋に青い水で満たされ、いまやだれもが手に入れることのできる薬用植物も、その甘い香りの葉や花々で丘の上を覆っています。空中を舞う蜂の一群は花の香りに惹かれ、鳥たちの甘い歌は大気に響き渡ります。 

 国王はケサルを最高の教師として重んじ、世界の獅子という称号を授与しました。それから国王は8万4千袋の薬用植物を渡し、リン国へ持って帰るようにと言いました。王国の人々は喜んで薬用植物を収穫し、それらを梱包し、ケサルに渡しました。これは彼がさまざまなことを教えたその感謝のしるしだというのです。 

 ケサルが薬用植物を運ぶのを助けるため、国王の大臣たちはみな巨大な鷹に変身しました。彼らは薬用植物をつめた袋を巨大な爪の中に入れ、一晩かけてリンへ飛んでいき、ケサルの王宮の屋根の上に置きました。 

 ケサルは任務が成就されたことをたいそう喜びました。彼は国王や大臣たちに別れの挨拶をしました。 

「3年がすぎたら、もっとも高い薬山の谷の端にある輝く日光の洞窟へ行ってください。そこですべての人々のために魔法の治療薬を作っている女性を発見するでしょう。 

 彼女は修行者として髪をまとめているでしょう。しかし彼女のまわりは光があふれているはずです。どうか、世界の獅子が祝福を贈っていること、すべての人の利益のために教えるときがやってきたことを、彼女に伝えてください。 

 国王、あなたご自身が彼女を至上の教師として迎えてください。そしてつねに敬意と献身でもって彼女に尽くしてください」 

 国王はケサルが言ったとおりにすると約束しました。そして国王と宮廷人たちは、リンへの道のなかばまでケサルを送りました。 

 

 
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