オルカ雪山で聖ツォンカパやヘールカの姿を見る

 そのあと私はツォンカパが修行なされたというオルカ雪山のガンナン(訳註1)へ行った。聖者(ツォンカパ)の洞窟にこもり、花や石の精髄を服用するラサヤーナ、すなわち辟穀(へきこく)術などを実践した。およそ十一ヶ月、修行は中断することがなかった。
[訳注1:'Ol kha gangs nang オルカ雪山もチベット人の故郷ともいうべき聖山。山南地方にある。ガンナンは雪の中という意味。地名ではなく、オルカ雪山の頂に近い雪中の洞窟ということか] 

 ある日空中に五色の虹の輪が現れ、その真ん中には祖師ツォンカパの尊い御姿があった。祖師の胸には橙色の文殊菩薩がおられ、祖師の周辺にはギェルツァプ・ジェやケドゥプ・タムジェなど八人の高弟の姿があった。このすばらしい光景を見て、無限の厭離心が生じてくるのだった。また敬虔なる心に満たされ、祖師の加持をよろこぶのである。

 ある日、ヘールカの御本尊が現れた。その御手、御顔、どれをとっても清楚で尊いのだった。右にアティーシャ、左にグル・リンポチェを従え、前には師ツォンカパがあらせられる。周囲にはあまたのダーキニーが舞っている。このとき天からか細い雨が降ってきて、洞窟のなかに水がたまったので、それを沸かして飲むと、心中は、言い表しがたいほどの喜悦で満たされた。辟穀の効果があったのか、身体は軽く、心地よく、いつでも禅定(ディヤーナ)に入ることができ、前世の記憶を蘇らせるなどの神通力を発揮することができた。

 人間の世界で飲食を取っていたとき、とくに他人のお布施による不浄の食事に頼っていたときは、仏法の力が衰退し、悟りを得ることはできなかった。



⇒ つぎ