女神に助けられて脱出

 サムテン・リンに滞在して十五日目、ラザン汗からの書信が届いた。私はヤクに乗り、十二名ほどの守衛とともにラサへ護送されことになった。しかし出発してすぐ、グカルラ(rGod dkar la)峠の手前で、突然赤い風が巻き起こり、そのなかに女神(ペンデン・ラモ)が現れ、告げた

「さあ、行きなさい!」

 護送していた守衛らはみな地面にばたりと倒れ、人事不省に陥った。赤い風に誘われるように、私はグカルラ峠を越えた。私は考えた、ラザン汗(ハーン)がすでに気づき、人びとも怪しみはじめた今、遠く離れるべきだ、と。そうして昼も夜も休まず移動し、コンポ地方(Kong yul)にたどりついた。 



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