不思議な現象を見せる魔神像

 アポ・ネテン(A po gnas rten)などの供の者を連れてパンリム・チューデ寺(Bang rim chos sde)へ行ったときのこと、夜、ツェン(妖魔)の祀堂(btsan khang)を訪ね、堂内で長らく楽器を演奏させ、歌った。供の者らは外部の人に知られるのではないかと恐れ、あわてたが、尊者は法術を使って音が漏れないようにしていたのである。

 タクポ・タツァン寺の本堂にはまた、ラーフラ(gZa’ rgod 曜魔)の神像があった。この魔神はたいへん凶悪で、僧侶に害をもたらすことがあった。(霊媒が)ペハル神を呼び、ラーフラの腹部に矛を刺した。傷口からは大量の出血が見られたが、かえって祟りが増大する事態を招いた。

 寺の高僧ンガリ・ウカルパ(
mNga’ ris dbu dkar ba)は尊者に救助を求めた。尊者は夜間、随行の者たちを連れて本堂へ行き、手印を結び、神像を指すと、神像はぶるぶると震え始めた。その場にいる人はみなその光景をはっきりと見ていた。それから神像の腹部に開いた孔に木綿布を当て、出血を止めた。また神像の口の中は人を害するための呪いの短冊や人形でぎっしり埋まっていた。尊者はそれを全部取り出し、神像に向かって害をなさないように約束させ、降伏させた。これ以降災いは少なくなり、地方豪族同士のいさかいも減った。 



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