大施主となるアボ王を訪ねる
翌日ツァキルク旗の主人はアボ王に謁見し、自分の見た尊者の奇跡の数々を話すと、王は感嘆しながら言った。
「もしそのようであるなら、私は尊者をおもてなししなければならぬ」。
次の日、アボ王はツァキルク旗の主人を頭とする一団を派遣し、尊者を迎えた。王自身が乗る玉のような白馬を連れて行かせ、尊者に乗っていただこうと考えた。尊者はその点をよく心得ていて、アボ王宮に(馬に乗って)来臨された。王は前世の善業によって、尊者を見た瞬間尊いお方であることがわかり、信仰心を篤くした。尊者にたいし叩頭し、カタを献じ、摩頂(頭を撫でること)を受けた。尊者に高座に座っていただくようお願いし、お香や選りすぐった食べ物を献じた。また尊者がお乗りになった白馬も献じた。
王は言った。「私とケケ(kekeすなわち王妃。満語のゲゲ)が治めるこの土地ではそなたに国師となっていただきたい。この生、この世において、ここにとどまり、われら愚かなる息子をお守りください」。
尊者は知っていた、王の治めるこの領土のあらゆる衆生、僧俗を問わず、貴賎を問わず、だれもが自分の前世において縁があったということを。それゆえこのように言った。
「私はモンゴルに来てしばらく滞在し、いつのまにかあなたたちの導師となっていました。あなたたちに替わってこの生、後世において守護することをお約束いたします」。
このとき王は尊者に王家所有の清潔で美しい天幕に滞在していただくよう頼んだ。
⇒ つぎ