アガルタ 

27 地球はいかに変わるか 

 

 家までの間ずっとぼくは満足しながら座っていた。疲れはしたけどすばらしい一日だった。並外れて大きなあくびをしているときも、ティッチはぼくの膝の上で寝ていた。家ではおいしい食事が待っていた。そして愛する妻も。妻はぼくの話を辛抱強く聞いてくれた。そしてそれに関してたくさんしゃべってくれた。

 妻が話し終えたとき、ドアベルが鳴り、ドアを開ける前に、今まで会ったことのない男が入ってきた。彼は人間だろうと推測した。なぜなら人間に見えたからである。しかし本当に人間かどうかはわからなかった……。

 彼はぼんやりと輝いていた。背が高く、なんでもここにあり、といった風だった。揺らめく銀のケープをまとい、刺繍が施された幅広のベルトをつけていた。髪は黒く、巻いていて、肩まで伸びていた。魅力的な顔だが、とくに若いわけではなかった。鼻は高く、均整が取れていた。目は宝石のように輝いていた。彼の笑顔を受信できることは何よりもすばらしい特権であると感じた。彼は腕を伸ばしぼくの妻をハグした。それからぼくと。ハグは電気のようにビリっときた。あきらかな、やさしい「いま」だけが残った。

「わたしはアルベルト・アベルタスだ」彼は高らかに言った。

 妻が付け加えた。「アガルタでもっとも智慧ある人です」

「わたしがここに来たのは、あなたがこの惑星の内側について書いていると聞いたからだ」椅子に坐りながら彼はつづけた。

「わたしの別名ははじまりを意味している。サンジェルマン伯爵やマスター・ヒラリオンと研究をしてきたのである。わたしはシシーラの両親を知っているので、あなたがたの愛の結合に祝意を表したい。いま、注目を浴びているなかで、地球の将来の計画について論じようではないか。地表の居住者は何が起ころうとしているかまったくわかっていないようだがね。彼らにまず教えることからはじめねばならない」

「何かがなされなければならないのはわかります」とぼくは同意してうなずいた。「近隣の惑星は地表の居住者が大気に悪い影響を与えたとみなしています。汚染とか、害悪なおこないとか、そういったものですね」

「地上の発展はいいことをもたらさなかった」われらの客は論じた。「銀河全体が待っていると言っても過言でないだろう。われわれはずっと長く、懸命に邪悪な力と戦ってきた。かなりの成果を得ることはできた。しかしいま地球のパワーを増大するときなのだ。まもなく地球に起ころうとしていることについて、あなたに地表の住人に警告を発さなければならない。そう、あなたは重要な役割を持っているだ、ティム。たまたまだが、あなたはこの世界にやってきた地表の住人のリーダーとなったのだ。地表の住人は事の重大性を理解していない。問題が数えきれないほどあることをわかっていない。

 われわれは密度について論じることになる。物理学にはさまざまな種類の密度がある。人間には一種類の密度があるのみだ。ほかの世界にはより軽い密度がある。たとえば、われわれの宇宙船とあなたがたが精霊と亡霊と呼ぶものたちは、姿を見せないであなたの前に現れる能力を持っている。あなたのまわりの見えない世界についてあなたは想像すらできないだろう。

 惑星地球は遊ぶ自由意志を持っている。自由意志はしばしば否定的な意味で使われるので、わたしは「遊ぶ」という言葉を慎重に選んだ。ほかの惑星では自由意志は制限され、抑制されている。暴力と利己主義は許されない。あなたの意志は間違った方向に進んできた。邪悪なもののためにそれを使い、権力を求めるのだ。権力は存在することが許されるべきではない。

 今こそ地球にとって、プラス思考で再構築するのにいい時であると、何の異論もなく、銀河系全体が信じている。この時点で再構築はすでに始まっているのだ。この美しい母なる地球の息を止めかねない、すべてのゴミを取り除く時なのだ。われわれはまもなくこれに取りかかろうとしているのだ」

「具体的に何をなさろうとしているのですか」ぼくはたずねた。「地球を救うなんてほんとうにできるんですか」

「できるとも!」彼の即答は清らかな夜の空気にこだました。ぶすぶすと刀が刺さったかのようだった。彼はつづけた。

「あなたがたの武器はすべてボロボロになり、二度と使えなくなるだろう。これはたしかなことだ。怒りと攻撃性は滅ぼすべき概念であり、感情。これら悪のシンボルはの世界においては居場所がない。いずれ地上を支配するだろう。暴力は終わらせなければならない。

 あなたが平和に、精神的に生きていくことをおすすめする。この報いとして自動的にあなたは人生のより高いレベルに達することができるのだ。あなたは子供たちに早い段階で、他人を傷つけないこと、自分たちが扱われたいように他人を扱うこと、などについて教えることになるだろう。思いやりのある考え方を実践してほしい、そして実際思いやりをもつこと。あなたがたの政府にもおなじことが言える。われわれは人間性の名のもとに正直で、効果的な行為を達成しようとしている途上にある。張り合うのは止めること。レースじゃないのだから。

 まもなく地球全体で避難しなければならなくなる。地球は第五次元に移動し、地表は浄化されることになるだろう。地球の周波数は増加し、電機は機能しなくなるだろう。大量の銀河連邦の光船がすべての国の町や地方に着陸するだろう。われわれはネガティブな魂とポジティブな魂を、三次元と五次元を分けるだろうす。こうして地上の人間の魂の大いなる改革がおこなわれるのだ。

 ひとたび船に乗ると、あなたは地球の変容を目の当たりにすることになる。それは幻想的な光景だろう。宇宙の秘密をあなたは知ることになるだろう」

「なんだかくらくらしてきました」とぼくはうなりながら言った。「なぜぼくがここにいるのか、そして何をすべきか、今、やっとわかりました。地表から来た多くの人々がここにいるわけですよね」

「そのとおりだ」われわれの新しい友人はにこにこしながら言った。「あなたとシシーラは難民らを組織化していくことになる。新しい地球は内側と外側の両方から五次元へ拡張していくのだ。砂漠は消え、かわりに熱帯のパラダイスが現れるのだ。

 地球の内側と外側はふたたび結合するのだ。じつに多くの世界樹が生えてくるから、よく見ておくがいい。そのうちの一本の樹に入ること。それは地球の大地からニョキニョキと生えてきたものである」

「よくわからないんだけど」ぼくは混乱して話をとめた。「樹々の内側は異なる環境があるってことですか? 冗談ですよね?」

「そう考えるのが自然だろう」アルベルトは笑いながら言った。「多くのことが起こりえる。でもそれについてゆっくりと論じる時間はない。あなたは物質そのものだ。しかしそれは変わりうるもの。あなたは元素で見ることも、元素で動くこともできるのだ。そのことをご存じであったか」

「すごいな。ぼくたちはすでに友だちだったんですね、ぼくの犬、ティッチみたいに」

「動物たちは元素を見ることができるのだ。あなたが見ることができないと知って動物たちはがっかりする。人間が経済活動をすることによって有毒物質が発生し、自己中心的に森を伐採することによって、野生生活や酸素の生産に多大な影響を与える。しかしそれでも母なる地球は変容することを願い、新しい姿を取ろうとしているのだ。

 われわれのテクノロジーがあなたがたより何万光年も先を行っていることを理解するべきだ。時が熟したとき、われわれは知識をあなたがたに分け与えることになるだろう。コミュニケーションの仕方にも、楽しみ方にも選択肢がある。どの家庭にも光エネルギーを物質に変えるマシーンが配られるだろう。衣服や食べ物も配られるだろう。繁栄プログラムがあり、それによって必要な財源が配られる。しかし最初の変化の波が現れるまで、詳細が明かされることはないだろう。

 新しい交通の手段も一般的になるだろう。車や電車、飛行機といったものはなくなるだろう。交通やインフラは大きく変化するのだ。新しいテクノロジーは医学も変える。あなたのまわりのひどい汚染もテクノロジーが解決するだろう。環境はあっという間にすべて変わってしまうだろう。

 戦争はもう起こることはない。人は世界中で兄弟であり、姉妹なのだ。あなたは宇宙を旅行することができるようになり。完全な銀河間相互協力が成り立っているので。

 近い将来、シシーラとティモシー、あなたがたふたりは自分たちのパワーがこの驚くべき変容のために使われることを理解しなければならない。この変容は何千年もの間、銀河系カウンシルによって計画されてきたものなのだ。わたしはもう去らねばならない。でもまた、地球のあちこちでさまざまなミッションをこなすグループの一員として戻ってくるだろう」

 来たばかりだというのに新しい時代の創造主、マスター・アルベルト・アベルタスは姿を消した。ぼくは妻がハグしてくれるまで、ポカンとして坐っていた。彼女の頬は喜びの涙に濡れていた。

「わたしたちは選ばれし者なのよ。地球を創造主の家畜の囲いに戻すのを手伝うことになるのよ。創造主は大いなる精霊であり、宇宙の根源なのよ」彼女は鼻を詰まらせた。ぼくはつぎの日の朝、おばあちゃんと彼女の夫に話すことができると思うとうれしくてたまらなかった。彼らもこの変わりゆく世界でミッションを持っていた。

 


⇒ つぎ