(3)東方の三賢人を求めて東方へ 

 ヨシュアが生まれたとき、いわゆる東方の三賢人が訪ねてきた。ヨシュアはこの3人、すなわちバルタサル、メルキオール、ガスパーを探す旅に出たことがきっかけとなって、東方の叡智を学ぶことになったのである。

 ヨシュアとビフはまず、魔術師バルタサルが住んでいるとされるアンティオキアの郊外へ行く。しかしすでにアフガニスタンのカブールに引っ越し、そこはもぬけの殻であることを知らされる。彼らは馬に乗って旅をつづけ、カブール近くの山にあるバルタサルの城を訪ねた。紫色の衣を着たバルタサルは悪魔のように見えた。彼らが案内された部屋にはどこへも通じる不思議な鉄の扉があった。バルタサルは言った。

「この扉からどこへでも好きなところへ行ってよいのだぞ。だがこの扉はけっしてあけてはならぬ」

 この扉はションザイと呼ばれた。おそらく凶宅のことだろう。

 ヨシュアはバルタサルから老子や易経、気、孫子の兵法などを学んだ。しかしあろうことか、バルタサルはヨシュアのことがいたく気に入ったようであった。

「ヨシュア、バルタサルはおまえを犯したんかい?」とビフ。
「まさか!」
「じゃ、その逆?」
「おいやめてくれ!」
「思うんだけど、神の子を犯すってのは本当によくないことだよ」

 バルタサルは年老いて死ぬ前、ヨシュアにガスパーを訪ねることをすすめた。ガスパーの仏教寺院は中国の高い山の上にあった。ヨシュアはここに6年間滞在し、カンフーを学んだ。また新しい武芸を学んだが、それはヨシュアがユダヤ人(ジュー)だったので、ジュー道と呼ばれるようになった。

 ガスパーによればメルキオールは兄弟で、ふたりはタミルの王子だという。ヨシュアとビフはタミルへ向かった。現地に着いて、彼らは町だと思っていたタミルが大きな地方であることを知る。彼らは隠者として修行をしていたメルキオールを探し当てた。聖者は海に突き出た崖の途中のくぼみに座していた。

「わしはおまえがだれであるか知っておるぞ」とメルキオールは言った。「ベツレヘムで見たな」
「はあ」
「人というのは変わらぬものじゃ。変わるのは肉体だけ。産着から育っていくのが見えるようじゃ」
「そうですか」
「飼い葉桶にはもう寝てないのかな」
「ええ」
「ブランケットなどはスピリチュアルを求める者には贅沢すぎるからのう……」
「あのう、われわれはあなたに教えを請うためにやってきたのです」とヨシュアはさえぎった。「わたしは人々を救うための菩薩になりたいのです」
「こいつはメシアなんです」とビフが助け舟を出す。「メシアですよ、ご存じでしょう。神の子なんです」
「神の子です」とヨシュア。
「ね」とビフ。
「ほう」とメルキオール。

 市場にお米を買いに行ったビフは着飾った色っぽい女性と出会う。「私についてきて。聖なる古代の知恵を見せてあげるから」と言われるがまま、部屋へ行く。彼女が見せてくれた聖なる書物に目を見開かされた。裸の男と女が絡み合っているのである。

「この本、パトロンにもらったの。古代の聖なる書、カーマ・スートラよ」
「ブッダによれば、欲望がすべての苦悩の源だって」とビフはクンフー・マスターが教えてくれたことを思い出しながら言った。
「彼ら(裸の男女)は苦悩してるように見える?」
「いいえ」
「私と試してみたいと思わない? その苦悩を」
「ええ」
「20ルピー持ってる?」
「いいえ」

 彼女はお尻を振って「グッバイ」を示した。しかし扉の前で言った。

「私の名はカシミア。戻ってらっしゃい、古代の叡智を教えるから。1ページずつね。1回20ルピーよ」

 ヨシュアがメルキオールとヨーガ修行を励むあいだ、ビフはカシミア(なめらかで、高価という意味)とカーマ・スートラの実践を学んだ。



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