第4章 01 招魂(上) 周代葬送儀礼中の「復」の儀礼 

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 霊魂の観念が生まれて以来、あらゆる巫術(呪術)は、とくに人をコントロールする巫術はその観念の影響を受けてきた。巫術を用いて人をコントロールする行為および感情は相手の霊魂に対する攻撃と支配があってこそ完成するものだった。それは直接相手の身体を攻撃する必要がなかった。亡霊や鬼魂をコントロールする巫術に至っては、術をかけるとき、形のない純粋な霊魂が対象となっていた。こうしたことから、巫術は霊魂をコントロールする方法の一つであることがわかる。

 古代中国ではつねに魂、魄二つの概念によって人の霊魂を表していた。秦代以前は魂、魄の意味が明確に区別されていた。しかし次第に混同されていった。一般的な信仰からいえば、魂は天に成り、魄は地に属す。それらは分かれて人の陽気と陰気を代表する。魄と形体は密接な関係にある。魂の独立性はさらに強く、自由度はさらに高い。魂と魄はどちらも精神的なものであり、つねに結合して一つとなっている。これらは肉体に付着して存在となる必要はなく、むしろ人の体のほうがこの両者に頼っているところがあり、それらが入ってくることによって生命があるのであり、活力があるのだ。

魂魄が肉体から離脱すると、人は死ぬことになる。あるいは考えや感情を失い、動くだけの人間になってしまう。人は死後、魂魄、あるいは鬼(亡霊)という存在になる。他人の体に入り、「託生」の存在になってしまうかもしれない。この状況下で、なおも魂魄は最初に身を寄せた人の考えや感情、性格や特徴を帯びているという。古代の迷信観念のなかでは魂と魄の性質は基本的には同じであり、人は両者の概念を同一視し、霊魂としてとらえるようになった。

 霊魂をコントロールするあらゆる呪術のなかで、巫師(シャーマン)がまず会得すべき基本的な技は、招魂術である。巫のもともとの意味は、「舞いでもって神を降ろす者」。現代の民間において巫婆(ウーポ)の術を「下神」と称するが、神霊や鬼魂を招来することによって巫術の目的が実現されるからである。そしてその前提として、用いられるこのもっとも基本的な手法があらゆる巫術の手法を含んでいるのである。

 古代、とくに秦代以前の招魂術の典型といえるのは、「復礼」である。亡霊に出現させて形を返す術もまた、「復礼」の変種といえる。降神附体、視鬼役鬼、収撮生魂、魂魄控制(コントロール)なども広義の招魂巫術(呪術)の範疇に入るだろう。



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