ディアーナ、ディアヌス、アラディア
わたしのほんとうの姿は猫。変身して女になったの
ブリジット・バルドー
エジプト、ローマ、ギリシアの文化が互いにより親密になったとき、ローマの月の女神ディアーナとギリシアにおける相応の女神アルテミスは、バステトと結びつくようになりました。バステトは出産と女性の保護の女神でしたが、ディアーナもすべての出産の際に存在すると考えられました。だからなぜかれらが互いに同等になったか、理解するのはむつかしくありませんでした。このディアーナという名は、中世のあいだずっと「魔女の女王」として広く知られていました。猫は女神崇拝やオカルト、ウイッチクラフト(魔女宗)と関係しているとみなされるようになりました。
しかしながら月の女神ディアーナはより多くの物語をもっていました。またイタリアにもディアーナはいました。いや、12のオリンピアの一柱ではなく、このディアーナは創造の女神であり、アラディアの母でした。イタリアのディアーナは魔女の女王であり、彼女の神話はわれわれが慣れ親しんだギリシアやローマの古典的な神話とは異なっていました。
ディアーナはほかのものが創られるよりも前に、最初に創造されました。彼女自身の内側から闇と光が分離しました。闇としてのディアーナと、もう半分の――魂の連れであり、双子の――光としてのディアーナに分かれたのです。この光はディアヌス、すなわち光を持つ者と呼ばれました。ディアーナは光を見たとき、それが美しいことを発見し、手に入れたいと思いました。彼女は光を自分自身に取り戻し、闇と光はもう一度ひとつの全体になるべきだと考えたのです。
しかしディアヌスはこの全体の一部になりたくはなかったのです。彼は美しさを誇りに思っていたので、ディアーナから逃げ、物質世界へ行き、死すべき存在として地上に住みました。そこでディアーナは始原世界の父と母のもとへ行き、ディアヌスとどうすべきかについてたずねました。すると彼女自身が地上に降り立ち、死すべき存在となるよう言われたのです。ディアーナは何よりも彼を欲していたので、彼女は欲するままに行動をとりました。
さてディアヌスは猫を飼っていて、その猫をとてもかわいがっていました。毎晩猫はベッドの上でディアヌスといっしょに寝ました。ディアーナはこのことを知り、猫(ディアヌスは知らなかったが、じつは妖精だった)と話をして、猫を交易所に置きました。ディアーナはディアヌスの猫に変身し、ディアヌスに寄り添って寝ました。彼が眠りに落ちると、彼女はもとの姿にもどり、彼と情熱的な愛を交わしました。こうして彼女はアラディアの母となったのです。
朝になって光が闇に征服されているのを知り、ディアヌスは狼狽しました。彼は「してやられた」と思って激怒しました。しかしディアーナが呪文の歌を彼に歌いかけると、彼は怒りを忘れ、音楽によってなだめられました。それからディアーナは糸車の上に坐り、人生の糸を紡ぎ始めました。(これはアラディアの懐胎時期のアナロジーではないかと思う)そしてディアーナは糸車をまわしはじめました。
ディアーナとディアヌスの名は、イタリアで「古い宗教」と呼ばれるウイッチクラフト(魔女宗)と結びついています。しばしばファウナとして言及されるディアーナは創造者であり、魔法の母なる女神です。一方で、ディアヌスは自然の神であり、森、動物、豊穣などと結びついています。
究極的にディアーナは娘のアラディアに地上にとどまるよう命じ、人々にたいする女神のありかたを教えています。アラディアはもっとも美しい巡礼者と呼ばれ、最初のウィッチ(魔女)と考えられました。地上にいるあいだ、アラディアは男女を問わず多数の信者を得ました。そしてかれらに伝統的な魔術を教え、満月の夜にどのように母ディアーナを崇拝するか伝授しました。同時に、抑圧や奴隷から解放し、勇気づける役割をもっていました。アラディアはその時代におけるリーダーであり、活動家であり、驚くべき女であるとともに、魔女でもありました。彼女は一般民衆に――農民といってもいい――母ディアーナの名において、かれらのなかにある誇りや内なるパワーをいかにして取り戻すかについて教えました。
現在、魔術においてディアーナとが結び付くのは、満ちていく月と満月、銀、白、黒のキャンドルの色、金属の銀と石の縞瑪瑙、ムーンストーン、クリスタルなどです。ディアーナと結び付く植物は、白バラ、ムーンフラワー、ハーブのマグワート(アルテメシア)です。すべての色の猫と妖精もまたディアーナと結び付きます。魔術的な存在であるこの両者の助けがなければ、アラディアは懐胎されませんでした。ディアーナはいつでも呼ぶことができるが、より大きな力を得るためには、少しだけ多めの月のエネルギーと魔法のパワーを加えるためにも、満月か月曜日(月の日)に呼ぶのがいいのです。
猫魔術を用いてあなたを助けるためにディアーナを呼ぶのは、はじめてとしてはすばらしく、ペットとの関係をリフレッシュするためにもよいのです。それはまた、魔女の女王と呼ばれるパワフルな神です、もっとも古い女神の協力を得て、自分自身を取り戻すいい機会でもあったのです。
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