4日目
すべての巡礼者がいつもより早めに、「お先に」の言葉もなく出発する。道はツェーナク・カンド(mtshal-nag kha-mdo)すなわち「赤黒い低地?」へとつながっている。ここの土が赤黒いことからその名で呼ばれる。ここは南西のマチェン(馬沁)県から来た場合の3番目の巡礼路へのアクセス・ポイントである。
タルチョ(祈祷旗)に埋まったふたつのケルンがある。ひとつは北東から来た場合の道の脇にあり、もうひとつは南西へと向かう道の上の巨岩の上にある。男女とも巡礼者は崖の下で拝伏し、土を集めて、注意しながら布に入れ、包み込む。男たちは道の横の丘を上り、杜松の枝を燃やし、その煙(bsang)を捧げる。
近くのテントの下に炉床があり、4人のターントリカ(ンガクパ sngags-pa)を連れたボン教ラマがアニ・マチェンを讃える儀礼を行っていた。このためにボン教徒らはトルマを用意していたが、そのうちのひとつはアニ・マチェンを表わしていた。これらボン教ンガクパも、仏教徒とおなじように時計回りで山をまわっていた。少なからぬ男女の巡礼客がボン教のテントに殺到していた。何人かの人々はケルンに行ってタルチョ(旗)を加えていた。
マチェンの町からやってくる巡礼者が途絶えることはなかった。ときおり激しく降ってくる雪にはかまわず、彼らは道端でお茶を作った。
ツェーナク・カンドから道は急激に南のほうへ曲がり、広大な牧草地を横切っていった。しばらくすると崖の下に旗竿が連なり、その合間に掲げられる多数の旗(タルチョ)を支えていた。男女の巡礼者はこの旗だらけの地域を歩いていき、旗竿のつらなりの端にある巨大なケルンに行きつく。
つぎに彼らは崖を登り、洞窟に入る。そこで彼らは土を少しばかり集め、硬貨を捧げものとして置く。それから彼らは二番目の洞窟へ行く。その入り口は多数のタルチョがカーテン状になっている。洞窟の中で捧げものをして、出てくると、道まで降りてくる。そこにはタルチョに包まれた杜松の枝があり、彼らはその周囲をまわる。そこにはドルマイ・ブムチュ(sGrol mai bum chu ターラーの水瓶から湧く水)という泉もあるというが、私は見つけることができなかった。
ここはルドゥン・シュグパ(Klu gdung shugs pa ルドゥンの杜松)と呼ばれる。
多くの巡礼者はこの聖地の近くにキャンプを張りたがる。キャンプの火は彼らが存在していることを示し、キャンプのどこからも会話や笑い声が聞こえてくる。この夜、近くにキャンプを張った人々がやってきて、私が火を起こすのを手伝ってくれた。そしてひとつの家族が私を保護下に置いてくれた。
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