7日目 

 朝、ひっそりと静まり返っていた。だれもがテントのなかで雪がやむのを待っていた。雪は相当深く積もっていた。8時が近づくと、舞う雪片はわずかになり、巡礼者たちは火を起こし、お茶を何杯か飲むと、純白の風景のなかに出ていった。

 少し離れたところに峠があり、斜面に立つ旗竿につけられたタルチョ(祈祷旗)が見えた。何人かの巡礼者はその周囲を回っていた。そこから少し進むと、巡礼路からはずれたところに無数の砂丘が盛り上がっていた。多くの巡礼者によると、これらはチェマ・ドゥデ(Bye-ma ’bru sde, Bye-ma ’bru-rdal 砂のように撒かれた大麦の意)と呼ばれているという。

 川に行きつくと(だれも川の名を知らない)すべての巡礼者は川を少し遡って、タルチョが目印となるドルマイ・ドウブチュ(sGrol-ma’i grub-chu ターラーの覚醒の水の意)という泉を訪ねる。巡礼者は泉の前で拝伏し、水を飲み、石を拾い上げる。それから馬を持っている人は馬を使って川を渡る。

 そこから遠くないところに、数多くの背の高い旗竿が立ち並び、色とりどりのタルチョがそれらのあいだを結んでいた。その上方の崖の真ん中に、洞窟の入り口があった。巡礼者はこのゴク・チェンモ(Gos-sku chen-mo 吊下がる偉大なる刺繍の意)という場所にしばらくとどまった。

 すべての巡礼者が拝伏し、男のみが新しいタルチョを掛けた。またほとんどの巡礼者が拾ったり運んだりしている巨大な石を背負い、この聖地の周囲を数回まわった。それから彼らは洞窟まで登り、土と石をかきあつめる。

 巡礼路を進み、ゆっくりと上り、峠の手前の急斜面で(実際はいつもこんなものだ)キャンプを張った。嵐が近づいていたのでそれぞれの家族はテントの中に避難し、冗談を言ったり、笑ったりする。腹いっぱい肉を食べることを夢見ているかもしれない。それは巡礼の終わりに現実のものとなるはずだ。


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