112−113
(驚くメトラツェの表情)モーという鳴き声。
(振り向くと)「白ヤク……」
(目のアップ)「父はあなたが持参金だと言っていたわ。昨日あなたは突然駆けだした」
(白ヤクを追いかけるメトラツェ)「あなたを追いかけたけど、追いつけなかった。でもそれで魔国の追っ手から逃れることができたのね」
(鳴く白ヤク)モー。
(白ヤクを追いながら叫ぶ)「待って! あなたなら私を竜宮に連れ戻してくれるわ」
「待って!」(青い空。白ヤクの姿はない)
焼け落ちたゴク部落
(黒い煙。苦悶の顔、顔。死体の山)
(焼け落ちた部落に幟を立てた騎馬隊がやってきた)
「われらより先に来た連中がいるようだ」
「魔国の軍隊が来たのだ。ゴク部落の男は皆殺しされたかもしれぬ」
トトン(陰険そうな顔の男。髭が長い)
「どうしようもないですな。天はわれら親族に報復させますまい。ただ戻ることにいたしましょう」
ギャツァ(正義感が強そうな若者。怒った表情)
「それはなりません! 逃げた人もいるはずです! ゴク部落はわが兄を殺しました。私はゴク部落の人をみな殺さなければならないのです!」
(トトン、あきれた表情で)「フン!」
*注 トトンはケサルの叔父。ギャツァはケサルの異母兄弟。
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