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(驚くメトラツェの表情)モーという鳴き声。

(振り向くと)「白ヤク……」

(目のアップ)「父はあなたが持参金だと言っていたわ。昨日あなたは突然駆けだした」

(白ヤクを追いかけるメトラツェ)「あなたを追いかけたけど、追いつけなかった。でもそれで魔国の追っ手から逃れることができたのね」

(鳴く白ヤク)モー。

(白ヤクを追いながら叫ぶ)「待って! あなたなら私を竜宮に連れ戻してくれるわ」

「待って!」(青い空。白ヤクの姿はない)

焼け落ちたゴク部落 

(黒い煙。苦悶の顔、顔。死体の山)

(焼け落ちた部落に幟を立てた騎馬隊がやってきた)

「われらより先に来た連中がいるようだ」

「魔国の軍隊が来たのだ。ゴク部落の男は皆殺しされたかもしれぬ」

トトン(陰険そうな顔の男。髭が長い) 

「どうしようもないですな。天はわれら親族に報復させますまい。ただ戻ることにいたしましょう」

ギャツァ(正義感が強そうな若者。怒った表情)

「それはなりません! 逃げた人もいるはずです! ゴク部落はわが兄を殺しました。私はゴク部落の人をみな殺さなければならないのです!」

(トトン、あきれた表情で)「フン!」

*注 トトンはケサルの叔父。ギャツァはケサルの異母兄弟。


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