032−033
ツクナ・リンチェン(竜族の王)
(湖の水が数十m吹き上がる。その頂に竜王が座る)
(竜王の横顔。下方のメトラツェが見上げる)
「娘よ、案ずるには及ばない。竜宮の疫病も収まった」
(必死の表情のメトラツェ)
「お父さま、いつもあなたのことを思っています! 私を迎えに来てくれますか?」
(竜王の顔アップ)
「娘よ、リン部落での生活もよさそうではないか。危難にあったときは、助けてあげよう」
(目に涙をためたメトラツェ)
「……」
(険しい形相のメトラツェ。胸を右手で抑えながら)
「ゴ部落に嫁入りして、今度はリン部落よ! これのどこがいい按配なの? 結局どういうことなの? 家に帰りたいのよ!」
(目を閉じて語る竜王)
「天の配剤を教えるわけにはいかないのじゃ。ただおまえの体は重要であるから、くれぐれもいつくしむように。わしはもう行かねばならぬ」
(吹き上がった水が消える。湖岸に残されたメトラツェ)
(涙をこらえるメトラツェ)
「天の配剤……。天の配剤って何なの?」
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