032033 

ツクナ・リンチェン(竜族の王) 

(湖の水が数十m吹き上がる。その頂に竜王が座る)

(竜王の横顔。下方のメトラツェが見上げる)

「娘よ、案ずるには及ばない。竜宮の疫病も収まった」

(必死の表情のメトラツェ)

「お父さま、いつもあなたのことを思っています! 私を迎えに来てくれますか?」

(竜王の顔アップ)

「娘よ、リン部落での生活もよさそうではないか。危難にあったときは、助けてあげよう」

(目に涙をためたメトラツェ)

「……」

(険しい形相のメトラツェ。胸を右手で抑えながら)

「ゴ部落に嫁入りして、今度はリン部落よ! これのどこがいい按配なの? 結局どういうことなの? 家に帰りたいのよ!」

(目を閉じて語る竜王)

「天の配剤を教えるわけにはいかないのじゃ。ただおまえの体は重要であるから、くれぐれもいつくしむように。わしはもう行かねばならぬ」

(吹き上がった水が消える。湖岸に残されたメトラツェ)

(涙をこらえるメトラツェ)

「天の配剤……。天の配剤って何なの?」


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