050051 

(遊牧村に戻ってきたメトラツェと息子ジョル)

「いったい何があったの?」

(彼らに気づいたギャツァ)

(ギャツァ、説明して母子を落ち着かせようとする)

「たいしたことではありません。柵を破って野獣が羊を襲ったのです」

(大きいお兄さんであるギャツァが、ジョルの頭をなでながら語りかける)

「弟よ、何日も見ないうちに一段と背が高くなったようだな」

(そこへ早馬が駆け付ける)

「まずいぞ!」

(必死の形相の馬上の男)

「上リンと下リン、すべての羊小屋がやられてるぞ! 恐ろしいことだ!」

(ギャツァの背後に鬼のような顔の漢妃とうろたえる村人たち)

「最近こんな奇妙なことばかり起きてるぞ」(と村人)

「母上、怒らないでください」「今晩はぼくが仲間といっしょに家畜を守りますから」(とギャツァが母漢妃に言う)

(自分のあごを触りながら推理を働かせるギャツァ)

「傷口を見る限り、人によるものではない。しかし狼の群れのしわざでもない……」


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