074−075
(センロンがゴモ、つまりメトラツェの手を取って語りかける)
「ゴモよ、私はなんと不甲斐ないことか。おまえにこんなつらい思いをさせてしまって」
「そんなふうに言わないで。どうしようもないことなのよ」
(センロンは決意の表情を見せる)
「安心してくれ。おれは絶対総監を説得してみせる。その日まで自分を大切にしてくれ」
(目を潤ませるメトラツェ)
「センロン……」
(兄のギャツァはジョルに言葉をかけている)
「ジョルよ、これからは、兄のおれはおまえを守ってやれない。自分を大切にしろよ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん」
「お母さんを大事にしろよ。お母さんを怒らせるようなことはするなよ」
(ジョル、兄の懐にしがみついて、涙が止まらない)
「さようなら!」「気をつけて!」
(旅立つ母メトラツェと子のジョル、白ヤク。見送る乳センロンと異母兄ギャツァ)
(振り返るメトラツェ)
「みんな……」
(村人全員が立って見送っている)
「本当に行かないといけないのね……。リン部落で暮らした日々ともお別れ……」
「承知しました! みなさまもお元気で!」(と、カラ元気を見せるメトラツェ)
(メトラツェは深々とお辞儀をし、ジョルはエーンと泣きわめき、白ヤクはモーと鳴いている)
⇒ NEXT