076−077
(月夜の晩、白ヤクに乗ったメトラツェとジョル母子は、リン部落から遠ざかっていく)
(ところがトトンは弓を持つ兵士らを叱りつけた)
「おい、射手たちよ、おまえら寝てたのか? なぜ矢を放たぬ!」
「はっ」
(放たれた矢がシュッ、シュッという音をたてて、夜空を飛んでいく)
「ヘッ、ヘッ、ヘッ」(と不気味に笑うトトン)
「やめろ!」(とギャツァ)
(ギャツァはトトンの胸倉をつかむ)
「おまえは何をしているのだ」
「ギャツァどのはリン部落の駆逐儀式をお忘れになったのかな」
(ギャツァは大声を出す)
「ジョル! 速く走れ!」
(雨あられと降る矢のなかを、ゴモ母子を乗せた白ヤクは疾駆した)
(こうして母子は国を追われて出て行った)
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