078−079
数十日後……。
(リン部落から遠く離れた大自然が広がる地方)
(母メトラツェは白ヤクに乗り、ジョルは歩いている)
「お母さん、ぼくたち、どこまで行くの?」
「そうねえ」
(遠くを見ながら母は言う)
「北に向ってだいぶ来たわねえ。この先に村があればいいのだけど」
「ジョル、このヤクに乗りなさい。道は長いんだから」
「疲れてなんかないよ。でもこの牛、ずいぶんゆっくりだなあ」
(不満そうな顔の白ヤク)
(ヤクの脚のアップ。ヤク、立ち止る)
「よくもまあゆっくりだなんて言えたもんだ」(と、白ヤク)
「このヤク、あなたが言ったことに腹を立てたのよ」
「どうして! 頭に来ることをぼく、言った?」
「まあいいや、ちょっと休もう」(と白ヤクは考えた)
(草地の斜面に腰を下ろす母子)
「母とふたりきりで、ジョル、おまえ恐くないかい?」
「恐くないよ、自由だって感覚」
(ジョル、何かの気配を感じてハッとするが何も言わない)
「自由?」
「うん」
(草の陰から母子を見ている謎の動物たち)
(じっと見つめる動物)
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