108−109
「この部落の存亡がかかっているのです! わが弟のどこがいけないのか」(ギャツァ)
「あいつは悪魔よ!」(と少女)
「わたしは競馬大会の勝者のものとなるのよ」(笑うジョルを思い浮かべながら少女は話す)
「あの悪魔のところへ行って奴隷になれというの?」(少女、必死の形相)
「ジョルは悪魔などではない! あの晩見たものは誤解なのだ」(とギャツァはジョルを擁護する)
ゴホッ(センロンの咳)
「競馬のことから説明しようか……」(センロン)
「だれでも栄冠を勝ちえることは知っておるだろう」「勝者はあんたを連れて帰ることになる」(センロン)
(少女、犬、うつむき加減)
「当然です。リン部落の第一の勇士が英雄と呼ばれるのです」
(勝ち誇ったような表情のセンロン)
「そうとはかぎらんのだ! 競馬で勝つためには、人よりも馬がよくなくてはだめだ」
「いい馬がなければ勝てんのだ」
(うなだれて小さくなる少女と犬)
「いまのところリン部落で一番速い馬はトトンの玉佳馬だ」「つまりは栄冠をつかむのは」
(少女、ハッとする)
「まちがいなくトトンなのだ」
⇒ NEXT