110−111
(うずくまる少女ドゥクモに、センロンとギャツァがたたみかけるように言う)
「お嬢さん、トトンがどんな男かご存じですか? つい最近も、頭が人間で体がネズミという怪物に変身して大騒ぎになりました」(ギャツァ)
「もしあなたがトトンのもとに嫁入りしたら、きっと面白い生活を送ることになるでしょう」(センロン)
(獣に襲われる姿を想像する少女)
「ウグ……」
(犬を抱いたまま、少女わめく)
「いやあ、トトンになんか嫁ぎたくなーい!」
「ジョルから土地を借りることが肝要。あんたも競馬の賞品になるなどいやだろう」(センロン)
「ジョルはわが弟。かの地に移住したあと、あんたはジョルといっしょになる必要もない。わたしが保証しよう」(ギャツァ)
「ほんとう?」(ドゥクモ)
(フッフッと笑うセンロンとギャツァ)
リン上部の総監のテント
(そのテントのなかで男たちが話し合う声が聞こえる)
「この件に関してキャロどのよ、もしいやならわれらが娘さんを連れ戻しましょう」
「いやいや、リン部落に貢献するのはわがキャロ家の誉れ」
(テントの中。火を囲って坐る男たち)
「どうも合点がいかないのは、娘が行くのを同意するどころか、喜んで行こうとしていることです」(ドゥクモの父、キャロ)
フッフッフッ……(笑うセンロンとギャツァ)
「どうであれ、これはよい機会じゃ」(長老の総監)
「そのとおりでございます」(まじめそうな表情のキャロ)
「ハハハ」「ハハハ」笑い声。
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