012013 

バサッ! (と波が筏にかかる)

(筏の上で向かい合うケサルと水から出てきた少年)

「ぼくはリン国から来たんだ」(ケサル)

(絶望的に首を振る少年)

「食べ物ある? なかったら、ぼくらすぐ飢え死にしてしまうよ」「どうにか逃げ出すことはできたけど」

(少年の目に生気がない)

「あんたたち、旅行なのかい?」「それなら戻ったほうがいいよ。こっちは危険だ」

(ケサル、決然と語る)

「いや、人を探してるんだ」「センチャム・ドゥクモという娘だ」

(話に気乗りしない少年)

「娘?」

(少年、思い起こすような目で語る)

「ここの娘は全員魔王に連れ去られてしまうんだ」

「ぼくの姉さんは……」

(ここから追憶)

(魔国の一団がやってくる)

「ハ、ハ、ハ、女は全員つかまえて、連れてこい!」(魔王)

「助けて!」「早く逃げて!」(逃げ惑う女たち)

(髑髏印の旗を両肩にかかげた魔王が父親らしき男の前にたちはだかる)

「大王!」「大王!」(従者の妖怪たち)

「おまえは家族を守れないならおれによこせ。大事にしてやるから」

(男、自暴自棄になって刀を抜いてとびかかる)

「妖怪め! 切り殺してやるわ!」


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