ミケロの旅日記
7月21日 独竜江にやってきたフランスの王子様(1)
独竜江地域にはじめて入った西洋人はアンリ・ドルレアン王子(Henri d’Orleans
1867−1901)率いるフランスの探検隊だった。その名が示す通り、ドルレアン王子はフランスの旧王家オルレアン家に生まれた(生まれた場所はロンドンだった)生粋の王族である。王子は22歳の頃シベリアからシャムへ縦断する探検家の旅に随行し、25歳のとき東アフリカを探検、28歳となる1895年、ベトナムのトンキン(ハノイ)を出発し、独竜江地域を経てビルマを抜け、カルカッタに到達している。このときの探検と調査はロンドンの王立地理協会からも高く評価された。その後トリノの貴公子との決闘に敗れて大怪我をするなど破天荒ぶりが目立ったが、キャンプ中はパンケーキを焼くのを得意とするような庶民的な一面も見せていた。しかしサイゴン滞在中、33歳という若さでマラリアにかかり死去した。ロンドンやパリで暮らしていたら長寿を全うできたかもしれないけれど、探検家である以上いつ命を落としても仕方ないという覚悟はあっただろう。とはいえ独竜江を踏査したころの王子は5年後に世を去ることになるとは想像すらせず、青年ならではのバイタリティーを発揮しているのだった。
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