モリガン ケルトの魔術と力の女神
コートニー・ウェバー 宮本訳
第1章 モリガンと会う
聖なる人々の偉大な女王
モリガンはトゥアタ・デ・ダナン(女神ダヌの人々、あるいは種族)のひとりである。アイルランドのケルト人の信仰におけるトゥアタ・デのもともとの役目はわかっていない。物語によると、彼らは神々であり、半神(デミゴッド)である、聖なる人々であり、断続的に彼らの関心のため、あるいは楽しみのため人間を助ける妖精種族である。
神話の中でトゥアタ・デは船に乗り、文明という贈り物を持って、空からアイルランドにやってきた。モリガンと彼女の姉妹、バイブとマハはこの中に混じっていた。トゥアタ・デは彼女らがミル(あるいはミレシアン)の息子たちに征服される前に国の創造を完了していた。神話では彼らはアイルランド・ケルト人の先祖とみなされている。この征服のあと、トゥアタ・デはシー(sidhe)の丘陵、別称妖精の丘の地下に引きこもった。トゥアタ・デはアイルランドの先住民だったのかもしれない。何世紀もの間に神話化され、のちにアイルランドにやってきた集団に取って代わられたか、同化したのかもしれない。教会は一般的に歴史であるかのように装って、アイルランドの神話を忍耐強く保存してきた。それゆえトゥアタ・デが血肉を持つ人間を表しているのか、神話的な存在なのかわたしたちにはよくわからないのだ。つまりモリガンが歴史上の女王なのか、神話上の存在なのかどちらとも言いかねるのだ。